※ロロの死後。
何本も電車を乗り継ぎ、バスに乗り、さらに30分程歩いたところに彼の、ロロ・ランペルージの墓はあった。
山盛りになった土に一本の木の棒が刺さっているだけの、墓とも言えない程に粗末な墓。この土の下に、彼は埋まっていて、その肉体がやがてバクテリアによって食い尽くされるのだと考えるとひどく虚しかった。
「あれ…?」
しかし、その墓の前には花束が置かれていた。その花束はまだ枯れてはいなかった。その花束を置いたのは誰か分からないが、彼と全く血の繋がっていない双子の姉が置いていたのだったらいいと思う。
私は知っていた。ロロがルルーシュさんの本当の弟ではないことを。私は覚えていた。つい最近までエリア11と呼ばれていたここで総督を務めていたナナリーが、かつて同じ学び舎で勉学に励んでいた友人だったということを。
私がそれに気付くことが出来たのは偶然だった。後に分かったことだが、ジェレミア卿がシャーリーさんにギアスキャンセラーを使った時、私も偶然その場に居合わせ、ギアスキャンセラーの効果を受けたのだ。私は気が付けて良かったと思っている。たった一握りでも、ロロの真実を知ることが出来たから。一方で、シャーリーさんの死に彼が関わっていることも知ってしまったのだが、私はそれでも彼と共にいた。彼を嫌うことも恨むことも恐れることもなかった。
よく見ると突き刺さっている木の棒には何かが引っ掛かっていた。彼が携帯に付けていたストラップ式になっているオルゴール付きのロケットだった。
「それ、どうしたの?」
「ああ、これ?誕生日に兄さんに貰ったんだ」
普段、あまり表情を変えない彼がやけに嬉しそうに話していたことを思い出す。彼にとってこれは、きっと何より大切なものだったのだろう。
「オルゴールも付いてるんだ?ねぇ、聴かせてよ」
「ダメだよ!…触らないで、これは僕のなんだから」
「あ…うん。ごめん」
何度頼んでも、オルゴールを聴くどころか触ることすらさせてくれなかったそのロケットを、私は手に取ってカチャリと開いた。
「これ…!」
ロケットが開いたことによって流れだしたメロディは何の曲かはわからないけれどすごく素敵な曲だった。しかし、それ以上に驚くものがそこにあった。
私と、ロロの唯一のツーショット写真。
嫌がるロロを引っ張って、無理矢理撮ったもの。それが、ロケットの中に埋め込まれていた。
じわり、じわりと視界が滲んで写真がぼやけて、見えなくなる。
こんなの、ずるい。ずるいよ。写真を撮るとき嫌がってたくせに。私のこと、友達だなんて思ってなかったくせに。
彼の死を知っても流れることはなかった涙が、まるで洪水のように溢れた。
ねえロロ、貴方がいない世界はこんなにもさみしいよ。
(2012/05/30)