濡れた頬に、


マゼンタは旅の途中、見知った顔の少女を見て立ち止まった。
俯いていて表情はよく見えないが、どうやら泣いている様子だった。

「ドンカラス、降ろせ」

「!?マ、マゼンタ!?」
「マシロか…」
「なっ、なによ!アタシじゃいけない!?」

濡れた頬にぷくーと膨れる頬。
かわいいな、と思った。そんな事を思えば後で双子の兄のクロエから
どんな鉄拳が飛んでくるのかわからないが。

「…女を泣き止ませるのはポケモンバトルより面倒だな」
「え?」

マシロが顔を上げると、頬に温かい唇の感触が残った。
「…マ、マゼンタ!!!」
そこにはさっきまでの涙に濡れていたマシロの姿はなく、顔を真っ赤にしていまにも追いかけてきそうな彼女の姿だった。

マゼンタはマシロをひょいっとお姫様抱っこをすると、再びドンカラスと共に空を駆けて行った。




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