淡い夢の中で、


 

「……貴方一体何様のつもりなのよ?」

「何がだ、リルベ地方有数の研究者を双子の兄に持つお前に言われることではないな」

「あら、クロエが聞いたら喜ぶわよ?」

「ふん」

『マシロ、そろそろ研究室に戻らないとならないぞ』

「リザードン、もうそんな時間なの?」


空をみるとすでに黄昏色に染まっていて、研究室にすぐに戻らなければいけない時刻が来ていることを示していた。
リルベ地方有数の研究室を抱えるベスパ団。
その研究員として育ったマシロ。
時間に間に合わなければ食事を抜かれることはおろか、殴られる危険もあった。





マシロを研究室に送り届けた後、しばらくドンガラスに乗って空中を見ていたが何事もないことを確認すると、マゼンタはうとうとと眠り始めていた。
長い桜色の髪が顔にかかっても気にすることなく、眠る姿。
マゼンタは夢を見ていた。
愛おしいマシロに触れる夢。
穏やかな愛撫の後、マシロの優しい抱擁。
淡い夢の中で、マシロに恋をしていた。


 
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