君と、男の子


「いや〜、浴室狭くてごめんね!ビンボーひとり暮らしだからさ!」

服を着てリビングに行くと、
バスタオルを巻いたまま、
子供がソファにいた。

「あれ?まだ着替えてないの?着替え一緒に置いといたでしょ」

ずっと俯いていて表情が見えない。
まだ髪も濡れていて寒そうである。


「ちょっと風邪ひくじゃん!ほら、下着も貸してやるから!」


とりあえず自分の下着やスウェット一式を渡すも、
首を左右に振られてしまう。



「え、ちょっとここに来て潔癖症とか?」



首を左右に振られる。



「じゃあ、なんで……」


「…いらない」


「ん?」


「これ、いらない」


そう言って、私の小ぶりなブラジャーを指さされる。


「え?ああ、まあ…まだ君には早いかな?じゃあ、」


「違う!!」


「は?じゃあ何よ!もう風呂も入った仲だしいいじゃん!それとも何、ダサいから付けたくないの!?」


「必要ない!!」


「あっそ!じゃあ頼むから風邪ひく前に服だけは着…」



なんだこのワガママな子供は!と一瞬頭にカッときたが、ある可能性が頭をよぎってしまった。


必要ない?




「”俺”にそれは必要ない!!!」




「…えっ…

もしかして君、…男の子なの?」





コクリ。








やっちまった。

半ば強制的に一緒に風呂入り異性ものの下着強要とかバカヤロウセクハラだよ。しかも相手未成年だぞ。




「ごめん……大きな声出して…」


「……………」


「いや、ほんとごめん。髪長いし細いしまつ毛長かったからてっきり女の子だと思ってた…なんで気づかなかったんだろう…お風呂とか無理矢理一緒に入ってごめん…あ、見てないから!見てないから安心してマジで!!」



「……………」



「いやもう本当申し訳ない、君は悪くないんだよ、悪いのは全部私で、今後訴えるでもなんでもしてくれていいから!でもさ、だからってこのままで風邪引かれるのはまじで困るじゃん?なんで弟の下着貸すから着てもらえません?」



それなら幾分かマシでしょ?



そう聞くと小さく頷いた。








良かれと思ってやってたことが、
まさかのセクハラだったとは……。


会社の上司もこんな気分なのかな。




ああ今夜も勘違いの雨に打たれて眠りたい



補欠選手!