帰り道

「梓先輩?」
「よー、京介」
「…?何か元気ないっすね」
「え〜?そんな事ないよ〜」

学校からの帰り道、後ろからかけられた声に振り返ると少し離れた場所に京介が立っていた。近くまで歩いてきた京介は私の顔を覗き込んで首を傾げた。図星だった為、一瞬固まってしまったが何事もなかったかのように装ってヘラリと笑う。

「…今日の夜って暇すか?」
「今日?うん、全然暇」
「じゃあ、久しぶりに玉狛で飯食って行きません?」
「おっ、まじ?」
「ちなみに、今日のご飯担当はレイジさんです」
「行く」
「了解っす」

少し考え込むような素振りを見せた後、思いついたように口を開いた京介からの誘いに首を縦に振ると京介はすぐにポケットから携帯を取り出してメールを打ち始める。そんな横顔を眺めて相変わらずイケメンだな、なんてぼんやり考える。にしても私が元気ないってなんで分かったんだ。そりゃ、まぁ確かにクラスの馬鹿どもに呆れてあんな中で生活してるのかと思ったら自分が恥ずかしくなって落ち込んでたけど。何でわかるんだよ、エスパーか。

「梓先輩?」
「う、ぉ!」
「…もうちょっと可愛い声出ないんすか」
「へぇ、私に可愛さを求めるの?」
「梓先輩黙ってればそこそこ可愛いと思いますけど」
「それは何?喜ぶべき?」
「そうっすね」
「えぇ…全然喜べないんだけど…」

急に黙り込んだ私を不思議に思ったのか、京介が顔を覗き込んでくる。驚いて一歩後ろに下がった私を見て京介が小さく笑う。とっさの時に可愛い声何て出ないだろうと抗議すれば京介はまたふっと笑った。可愛い、と言われたけれど黙っていればというおまけ付きに素直に喜べない。

「まぁ、嘘なんで」
「ちょ、ちょっと待って。どこだよ、嘘ってどこが嘘だったの?」
「…さぁ?」
「京介許すまじ。蜂の巣にしてやる」

頭を悩ませる私に向かって平然とした顔で嘘だと言ってのける京介に詰め寄る。まあ嘘ですって言うだろうとは思っていたけどこのタイミングで言われるとどこから嘘だったのかが気になってしょうがない。肩を竦めてみせる京介の胸倉を掴んで文句を言えばまあまあ、なんて言われる。

「梓先輩がやると蜂の巣のレベルじゃないっすよね」
「木っ端微塵?」
「ですね」
「それこの間陽介にも言われた」
「トリオン多いから仕方ないとは思いますけど。見てる側としてはえげつないっすね」
「この間、仮想戦闘訓練してたんだけどさ。メテオラ分割しないでまんまぶん投げたら市街地半壊してて」
「仮想戦闘モードでよかったっすね」

私の言葉に複雑そうな顔をする京介に先日の私の話を聞かせれああからさまに引いたようね目をしていた。が、これに関しては自分でもやばいと思ったから何も言わない。さすがに市街地を半壊させられるほどの力を自分が付けていたなんて考えただけでも軽く引く。実践じゃなくてよかったとその事件をお推した時も言ったが、京介も同じことを思たようで表情は引き攣っていた。

「ほんとにね。普通に公平達引いてた」
「いや出水先輩は人のこと言えないと思うんすけど」
「それは私も言った。けど、"レベルが違ぇんだよ"とか言ってた」
「声マネ全然似てないっすね」
「うるさいな、注目すべきはそこじゃないでしょ」
「梓先輩の声マネが壊滅的すぎて内容入ってきませんでした」
「本日二回目、京介許すまじ」

その時居合わせた公平のリアクションを教えれば、京介が首を傾げる。その疑問に関しては私も同じことを思ったが公平曰く違うらしい。そう京介に教えれば口元を押さえてぷるぷると震え始めた。私が公平の声真似をしたのがどうやらツボにはまってしまったらしい。珍しく声を出して笑う京介を物珍し気に見ながら抗議すれば、途端にいつもの無表情に戻って私をdisり始めた。

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