「一ノ瀬さんって最近アツシとよく一緒にいるよね」


三時間目の授業が終わり、ちょうど休み時間が始まろうとしていた頃、私にそう言って声を掛けて来たのは、同じクラス氷室だった。


「氷室、悪いんだけどさ」

「え、何?どうかした?」

「ちょっと周りの女子の目線が痛いかなーなんて」


イケメンくんに話し掛けられるのは光栄だけど、クラス中の女の子達が思いっきり私にガン飛ばしてて恐い。あの目は、多分きっとこう言ってる。

“おめぇ氷室くんにふざけたマネしたらマジ承知しねーかんな”

…洒落にならないから本当に。


「で、何か用かな氷室くん(早く終わらせないと殺される…!)」

「あ、そうそう。今度アツシとデートするんだってね」

「いやしないけど?」

「ダイエットしなきゃとか言ってお菓子控えてるんだよ。あのアツシが」

「女子かよ」

「この前の日曜も、いつになく真面目に試合してたし、これも一ノ瀬さんがデートしてくれるおかげだね」

「いやだからしないっつの。何?バスケ部ってみんな人の話聞かないの?」

「俺関係ないけど、一応アツシに一ノ瀬さんの連絡先教えておいたから」

「は?」

「ごめんね、勝手な事して…。でも俺はアツシがあんなに真面目になったのが嬉しくて…」

「その辺はどうでもいいけど、何で氷室が私の連絡先知ってんの?」

「クラスの女の子に一ノ瀬さんのアドレス悪用するから教えてって言ったらすんなり教えてくれたよ」


どこのどいつだクラァァァアッ!!つーか聞き方!!もっとマシな聞き方あったろ!!


「…もういいよ。わかった。教えてしまったもんは仕方ない。だけど私、全力で無視させてもらうからね」


ピロリロリロリーン


あ、なんかメールきた。なんか嫌な予感する。なんか件名のとこに“むっくんだよ!”とか書いてあるんですけど。




件名:むっくんだよ!
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室ちんに心ちんのアドレス教えてもらっちゃった!これでいつでもメールできるね(^o^)




「削除」

「なんで消すの?ダメだよ一ノ瀬さん」

「ダメなのはあんたらバスケ部の方だよ」

「仕方がないな。俺がアツシにもう一度一ノ瀬さんにメール送るように伝えるから。今度は消さずに取っておいてよね」

「何回来ても私消すよ?」




件名:氷室です
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アツシ、なんだか一ノ瀬さんスマホの調子が悪いみたいで…。俺が一ノ瀬さんに代わって返信するよ。

以下、一ノ瀬さん
敦くん、急にスマホの調子がおかしくなったみたいなの。それより、デートいつにする?連絡まってます(ハート)




「送信、と」

「ちょっと待て。このメールはおかしい。私、こんなんじゃない!まず敦くんなんて言わないし!これはバレると思う!」

「そうかな?」


ピロリロリロリーン


「あ、アツシからだ」




件名:え、二人いま一緒なのー?
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なんでそこにおれいないのー?




「知らねぇわ」

「あ、アツシもしかして三限目寝てたのかな?寝起きとかよく訳わかんないメールよこすから


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