03
あれから2週間が経ち、ようやく関係者に顔を覚えてもらうまでになった。そして今日はメディアに乗り出す日、つまりは雑誌の発売日となったのだ
今日の朝は何も仕事がなく、オフとなっていた為適当に部屋の片づけをし暇を持て余してた。こんな時間ももったいない、折角だから早めに事務所へと向かうことにした
「おはようございます」
いつも通り扉を開けるとそこには忙しそうな龍也さんと斎藤さんの姿
「ど、どうしたんですか・・・?」
「それがねー、とんでもないことになっちゃってね」
答えてくれたのはリンちゃん、とんでもないこと?でも笑顔のような...
「なまえちゃん、大人気みたいねっ♪」
「それってどういう...?」
私が言葉を発した瞬間、窓ガラスが大きな音を立てて割れた
あぁ、きっとあの人だ
「ハーッハッハッハ!!!!!Ms.みょうじ!!あなたやっちゃいましたネェ〜」
「いやんシャイニーったら!そんな言い方したら悪いことしたみたいじゃないっ」
「Oh〜それはすみまシェーン!どうやら言葉を間違えたみたいデース☆」
絶対悪いと思ってないよね、この人
「うわっ、また窓ガラス割りやがって...クソ忙しいっつーのに!」
龍也さんが窓ガラスの割れた音にやっと気付いたのか、それだけ忙しいということらしい
「なまえ、よかったな!」
「えっ、何が?」
話しかけてくれたのは斎藤さん
「雑誌の反響がすごくてね、朝からあのモデルは誰なんだって電話が鳴りっぱなしなんだよ!!」
(嘘みたい...)
そんな大勢の人が私を見てくれてるってこと?どうしよう、嬉しい。思わずニヤついてしまう
どうやらモデルデビューは上手くいったようだ
上手くはいったが、この忙しさは申し訳なく思う。嬉しい悲鳴といえば聞こえはいいのだろうけど、きっと龍也さん達は毎日残業してしまうと予想できてしまう
「というわけデェ〜Ms.みょうじにはテレビ出演してもらいまショーウ!!」
突然の社長の声に吃驚する
「え...そんないきなりですか!?」
「考えはありマース!!YOUがテレビに出ちゃえば、電話は鳴りやむ筈なのデース☆」
どういうこと?
「そうね、なまえちゃんがどういう人なのかわかれば騒ぎも落ち着くのよね」
嬉しい半面不安が募っていく。事務所の人達はまだ知らない、私の過去。自分自身ではふっ切っているけれどいつ情報が漏れてしまうのか
―怖い
頑張ろうと思った矢先にバレてしまうのはあまりにも残酷で、今まで何も考えなしに行動していた自分がただただ嫌になる
「なまえ、どうした?」
龍也さんが異変に気付いたようで話しかけてくれる。それでも...私は嘘をつかなければならない、過去をふっ切った自分のためにも
「なんでもないよ!武者震いってやつ」
笑って言えば「調子に乗るな」とゲンコツを貰った...痛い
変わりたい、そう覚悟してこの場所に来たのに人間はそう簡単に変われるような生き物じゃない。過去に負い目がある私がこの先ここで生きていけるなんて、世間はそう簡単に許してはくれなかった