しまった...家だからと気を抜きすぎた...
身体を洗ってたっぷりお湯の入った湯船に浸かる。いつもならぼうっと今日も頑張ったなぁ、とか、明日は何しようかなぁとかゆっくりと考えられるのに今日は違っていた
「一緒の部屋で寝るのかな...」
ぽつりと呟いたそれは浴室では響いて、何を考えているんだと顔にお湯とは違う熱が集まる。1人恥ずかしくなってぶくぶくと頭までお湯に浸かってしまうと、心なしか冷静になれた気がした
「あれ...ない.......?」
バスタオルでしっかり身体を拭き、服を着ようとそこを見るとパジャマ代わりにしているTシャツとスウェットは置いてあった。けれど
(下着がない...)
そして冒頭に戻るわけだが。普段ならお母さんが洗濯をして用意してくれていたり、自分で取りに行くなりできるけれど今日は京治がいる。どうしようか...と考えている内にバスタオルで巻かれている身体も冷えてきてしまう、ひとまず服を着て決まって早く部屋に取りに行こう。家の中のこんな短い廊下で京治と出くわすことはないはずだ
「なまえ?もう出たの、早いね」
「け、京治......」
「髪、乾かさないと風邪引くよ」
「う、うん、京治濡れちゃうといけないから離して?」
タイミング悪くリビングの後ろのドアから京治が出てきて背中側から抱きしめられる。それらしい理由で離して貰おうと試みるが本人はいい匂いがする、なんて呑気に私の髪をくるくると弄っている
「なにそんな慌ててるの」
「あわ、慌ててないっ!ちょっと部屋に忘れ物取りにっ」
「ぶっ...それのどこが慌ててないっていうんだよ」
けらけらと楽しそうに笑う京治を尻目に本気で焦っていると、漸く腕が離された
「1人でいるの寂しいから、早く行ってきて」
触れるだけのキスを一つ、意地悪な顔で笑った京治は私の背中を押した。早く部屋へ行って下着をつけよう、これ以上恥ずかしくなる前に
京治は自分の家でお風呂は済ませてきたらしいので、髪の毛を乾かしている間に栓を抜き、お湯の抜けた浴槽を洗ってから京治のいるリビングへと向かった。テレビの音だけがBGMのように流れている、ソファに身体を預けて京治は寝ていた。そっと横に座り寝顔を見つめる
「睫毛長いなぁ......」
ふと頭を撫でてみると、思ったよりもふんわりと柔らかい髪。触ってみると気づくことがあるものだ、なんとなく京治が私に触れる理由がわかった気がした。自分からもっと彼に触れても良いのだろうか、今なら寝ているし気が付かれることはないだろうか、と少しドキドキしながらキスをした
「...そんなんじゃ足りない」
「ひゃ...!」
寝ているはずの京治にぐいと腰を引かれ、彼に跨る格好になる。やだ、これ恥ずかしいと文句を言おうにも深い口付けに口が塞がれている。わざとくちゅりと音を立てるように舌を絡ませ、息を吸う暇もない。苦しさに涙が出そうになったところで漸く唇が解放された
「はぁっ....はぁ...けぇ、じ」
「その顔、煽ってるようにしか見えない」
「......っ!」
京治の手が服の上からすっと腹部を撫でる。ねぇ、いいの、なんて真面目な顔をして彼が問う。いくら経験が無かろうとこの状況で確認される内容は私でもわかる
「俺、期待しちゃってたんだけど」
「い、....ぃょ...」
顔を隠しながら今にも消えそうな声でしか言えなかったそれを京治は聞き取り、任せてくれたらいいからと優しい声で囁いた
どうしようなんて思う暇もないくらい、私は京治の手に溺れていった
2016.03.27
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