"ギラギラしてる"
全員揃った烏野を見た印象。音駒のコート側にも伝わってくる。ピリピリとしたムードに、ついには日向くんと東峰さんが衝突した。ヒヤリとするプレーに念の為すぐに手当てをできるように救急箱を近くに寄せておいた
ピピーッと笛が鳴り長めの休憩に入る。タオルとドリンクを配り終えると黒尾さんから烏野の方見過ぎじゃね?なんて言われる
「私昨日見れなかったんですよ、あの速攻」
「あー...初めて見るとやべぇよな、コース絞れば拾えるけど」
「音駒の対応力すごいですもんね」
「お、なまえちゃんついに梟谷から音駒に来る気になったか?」
「梟谷が1番に決まってるじゃないですか」
ぶひゃひゃと下品な笑い方をされふぅ、と溜息がでる。休憩になるとすぐに絡んでくるから私の休む暇もない
「あの、す、すみません!」
「はい、あ、日向くん?どうしたの?」
「えっと...そのー...」
烏野側を見ると結構な人数がテーピングやらでマネージャー2人に集まっていた。つまり向こうで対応しきれなくてこちらでテーピングを借りたいということだろう
「ちょっとこっちまで来れるかな、救急箱あるから」
「ひゃい!」
「ふふっ...緊張しなくていいよ、私潔子さんみたいに美人じゃないし」
「ハイ!イイエ!?」
日向くんはあわあわと後ろを付いてきた。なんだか反応のとても面白い子だ。先ほどコートで見たギラギラとした目が嘘みたいに普通の男の子だった
「影山くんとの速攻、すごいね。びっくりしちゃった」
「....あれは、おうさ、影山がトスをくれるからで、俺は...」
「........?」
丁寧にテーピングテープを巻きながら話しをする。するとすぐに日向くんが言い淀む、もしかして私は地雷でも踏んでしまったのではないかと焦ったけれど、日向くんの表情はそれではない
「あの、こんなこと聞くの変かもしれないスけど...下手くそな奴が、新しいことをしたいって思うの、どう思いますか」
日向くんの悩みは何も変なものではなかった。私も中学生の頃、その壁にぶち当たった。競技はバレーではなかったけれど、それは何においても同じ状況になれるもので、きっと多くの人が悩んでいること。今はマネージャーだから、選手としてのアドバイスはできないけれど、と前置きをして
「強くなりたいって思って新しいことをするんでしょう、良いに決まってるじゃん。細かいことはよくわからないけど、いつまでも同じ場所で止まってたら強くなれない。やってみなきゃわかんない、って思うかな」
少しだけ日向くんの表情が明るくなった気がした。この合宿にいる以上は全員が敵同士だけれど仲間なんだ。うまく後押しできているのかは定かではないけど、これでなにかのきっかけになればいい
「はい、テーピング終わったよ。日向くん、頑張れ」
「アス!!」
背中をポンと押せば眩しいくらいの笑顔で返事をくれた。うまくいったみたいだ
彼の中のピースが嵌った時、きっと私たちにも刺激をくれるよね
2016.04.05
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