「なまえこっちだよ!」

「美月ちゃん!久しぶりー!」


成人式後に高校の同窓会が行われることになった。卒業から2年、たった2年かもしれないが校則から解放された私たち若者と呼ばれる者には、容姿を好きなように変えるには十分な期間だったようだ。かくいう私も、あの頃は長く伸ばしていた髪の毛を今では肩にかかる程まで切りゆるくパーマをあててみたり、メイクを年相応にしてみたりと楽しんでいた


「みんな変わったねぇ」

「中身はどうか知らないけどね」


ガヤガヤと煩いこの会場では式などで体育館に詰め込まれたときのようにそこら中で会話がなされている

(お酒じゃなくて人酔いしそう)

「なまえいくよ〜」

「あっ、うん....っ!ごめんなさいっ、」


ぼーっとしていて少し離れてしまった美月ちゃんのところへ行こうとすると、人混みでよろけてしまって誰かにぶつかってしまう。少しだけ懐かしい香りがしたのは気のせいではない


「大丈夫?みょうじさん」

「お、及川くん、...ごめんね、ぶつかっちゃって」

「俺は全然平気だから。ケガしてない?」

「私も大丈夫だよ、じゃあね」


この少し甘い懐かしい香りがお酒と合わさって頭の中をくらりと酔わせてくる。早く美月のところへ行かないと、意識をはっきりさせるように前へ一歩踏み出した。なんとなく視線を感じてはいたけれど、私には振り向く理由もない



(私から離れたんだから、私から近寄ったらダメなのに)


その思いはまるで鉛のように地面へと沈んでいく




2016.03.11