彼女らの言った"傷つける"とは精神的なことではなくて...いや、結果的にはそこにも関与してくるのだろうけれど、肉体的に傷つけるという意味合いがあった


「私が及川くんを知ったきっかけも、好きになったきっかけもバレーが関係してるの」


一度流れ出した涙は止まらず、次から次へと溢れ出していく



付き合っていく内に及川くんの中でバレーがどれほど大切なのか身に染みて感じた。普段は少しちゃらけているのにバレーに対してはとことんストイックで、真剣で、真っ直ぐに前を見ていて、それなのにすごく楽しそうで。そんな姿に惹きつけられた。だから及川くんが大切なものを私も大切にしたいって思ったんだ...あんまり恋人らしいことはできなかったけど、バレーをしている及川くんを応援しているだけで私もすごく楽しかった


「でも...ごめんねっ、あの子たちが及川くんからバレーを奪うの、どうしても嫌だったのっ...!私は別れてもいいから、バレーだけはっ...守らなきゃって...」




弱い癖に一人前に彼を守ろうなんて考えていた。どれだけ思考を巡らせてもその答えは一つにしか辿り着かなくて、それが及川くんを苦しめることだって理解もしていたけれどそれでもバレーだけは特別だったんだ


「友達になんて戻りたくなかった...及川くんの隣でバレーしてる姿見続けたかった...っ」





嗚咽の混じる言葉に及川くんは理解してくれたのだろうか、私はいつの間にか彼の胸の中に抱きしめられていた。ぎゅっと目の前にあるシャツを握りしめて涙を落ち着かせようとするけれどなかなか止まらない。シャツを握る手の上にぽつりと雫が落ちた。何かと思い顔を上げようとすると、それを阻止するかのように益々ぎゅっと抱きしめられる


「ごめん...今は、顔、見ないで...」

「うん......」


私の涙が少し落ち着いた頃、及川くんは私の肩に顔を埋めて少しだけ震えていた





2016.05.18