あれから特に日常が変わるようなことはなかった。かおり先輩と雪絵先輩には報告とお礼がてら付き合うことを言ったけれど、部員とマネージャーとして公私混同したくないという思いもあり他の人には言わないでほしいとお願いをした


「もちろん言わないよ」

「でも気づく奴がいるかもね〜」

「態度を見て、本能的に」


言わずもがなその言葉で誰のことかはわかる


「......わかってしまったら潔く認めます。でも彼女だからって部活中に赤葦だけ特別に扱ったりとかしたくないので...」

「なまえちゃんがそんな子じゃないってわかってるよ」

「大丈夫大丈夫〜でも2人を見てニヤニヤするけど許してね〜」


それはとてもやり辛いのでやめて欲しいが、きっとかおり先輩がなんとかしてくれるだろうから黙っておく


「さ、部活行こう!」







と和やかに部活を始められると思ったのだけど......


「なぁみょうじと赤葦って付き合ってんの?」

「前から付き合ってたんじゃねーの!?」


木葉先輩と木兎先輩に囲まれた赤葦は、それはそれは面倒臭そうな顔をしていた。私が体育館にいることがわかると、2人はずいと私を問い詰める。あぁ、たった先ほどマネージャーに言ったばかりのことをここでも言うことになるのか、と頭を抱えたくなった。後ろではすでに雪絵先輩が笑っている。私も傍観者としてこの状況を笑いたかったです、先輩


「あ、赤葦、これどういうこと...?」


私に押し付ける気満々だっただろう赤葦に聞くと、なんでもあの屋上に連れて行かれた時、私の手を引く赤葦と私の後ろ姿を木葉さんが目撃していたらしい。これはもう誤魔化しもきかないだろう


「で、実際どーなの?」

「えっと、つ「付き合ってますよ」...はい」

「俺のなんで、邪魔しないでくださいね」


私が言うより先に赤葦に重要な部分を取られた気はするが、その後の言葉に顔がカッと熱くなる。恥ずかしくなって顔を覆いたくなるが、真相がわかった先輩方もこれで納得してくれるだろう、と先輩へ向き直ると、赤葦の言葉に2人がピシリと固まっていた。そしてハッと気づいたように


「まじかよ!なんで赤葦なんだよ!」

「今まで付き合ってなかったのかよ!?赤葦なんてずっとみょうじのこと見てたじゃねーか!」


と叫ぶ。どちらの言葉も聞き捨てならないけれど、もう部活の開始時刻が迫っている。そろそろこの話終わりにならないかなぁと赤葦を見ると、面倒臭そうに溜息をつき「部活始まりますよ、木兎さん今日もスパイク練するんでしょう?」と木兎先輩の首根っこをひっつかんでズルズルと引きずっていった

一方の木葉先輩もかおり先輩や雪絵先輩に言われようやくアップを始めた。私もふぅ、と溜息を一つつきマネージャーの仕事に向かう


「赤葦...俺のって言ったよね...」


水道で1人呟くと、その言葉がじわじわと心の中を侵食していき熱を上げた。本当に彼女になったんだなぁ、なんて少し自覚が出てきてその日の部活ではあまり目を合わせられなかった



(嬉しいけど、恥ずかしいな)




2016.03.14