「…ごめん」


彼の浮気を咎めたらそう言われた。


「…言い訳もないのかよ」


「…ごめん」


俯いてただその言葉だけを繰り返す。


何だよそれ。


言い訳ぐらいしてみろよ。


無様に土下座して泣いて否定くらいしてみろよ。


「何で…」


ポロリと口から滑り落ちた自分でも情けないと思う弱々しい声。


…こんなはずでは無かった。


もっと怒鳴って責めて、言いたいことを言いたかった。


言い訳する彼に罵倒したかった。


「好きなんだ…」


誰が
なんて、聞かなくてもわかる。


「何だよそれ」


じゃあ、俺が浮気相手だったってこと?


最初から俺が邪魔者で、俺だけがコイツは俺の彼氏だと勘違いしてた…?


「…ハハッ」


乾いた笑いが漏れる。


馬鹿だ。


馬鹿過ぎて呆れる。


1人付き合えるって舞い上がって、手を繋ぐだけで緊張して、キスして…いっぱいの初めてを経験した。


「お前…サイテーだな」


精一杯の強がりも震える声で消えたくなる。


『俺もお前のことなんて遊びだった』


なんて言えたらどれだけいいか
未だ俯いている彼は俺の流している涙にも気付かない。