暫く経ち、彼の啜り泣く声に深く沈んでいこうとした意識が戻る。


「やめてくれ、俺はそんな最低な奴じゃない…約束したんだ。やくそく…」


苦しそうな声。


繰り返される“約束”という言葉。


僕はただ寝た振りをするしかなかった。


僕は彼をこれ以上好きになってはいけないのだ。


彼の存在を大きくしてはいけない。


「ばかだなあ」


思わず溢れた言葉は彼に対してだったのか自分に対してだったのかよく分からなかった。