コルダ加地


主人公は香穂子の友人。土浦と同じクラス。
加持が転校してきて香穂子を追っかけて来たと知ってから接点ができる。
最初は会いたい為に有名な進学校から転校してくるなんて、凄い子だなぁって思う程度だったけど、誰にでも優しくて、頭も良くて、真っ直ぐで見た目も良くて。
次第に惹かれていくが、加持は香穂子一筋。主人公が加持の事好きだと誰かに話しているのを加持に聞かれる。
恥ずかしくなって全力で離脱する。が、気づけば加地も追いかけてくる。森の広場を全力疾走する二人。

「待って片瀬さん!」
「な、何で追いかけてくるの?!」
「さっきの話ーー」
「ごめん、お願いだから忘れてー!」
「どうして?!」
「だって(香穂の事が好きなの知ってるから)」
なんて言えず、更にスピードを上げる。でも短距離型の主人公は徐々に失速して校舎裏で掴まってしまう。
「やっぱり、ー走るの速いね」
息を整えて主人公は言う。
「ごめん。迷惑なの、分かってるから」
「迷惑?」
「加地くんが私の気持ちに応えられないの分かってるから、…頑張ってなくすからさ、…今までみたいに話したり…してもいいかな…」
涙声になりながら腕で目を隠して言う。
「何で振られた感じになってるの?」
「だって!」
ギュッと抱きしめられる。
「頑張ってなくすとか、しないで」
「え…」
肩に疼くめられてはっきりとは聞こえないけど
「…そんな事言われたら…期待するんだけど」
「うん。…ってか、追いかけてくる時点で分かるでしょ?」
「わからないよ〜追い討ちかけにきたのかと」
「あははっ。本当に、君は面白いね。」
加地の両手が主人公の頬を覆う。
「僕は、いつも一生懸命な君が、自分の事ちゃんと分かってる君が、仲間といる時、心の底から笑ってる君が、…真っ赤になって泣いてる君が、好きなんだ。」

主人公は昔ヴァイオリンを弾いていた。父親が趣味でヴァイオリンを弾いていて、その姿を見て主人公も弾き始めた。ヴァイオリン教室に通い、何度か発表会にもでた。
一度コンクールを観に行った事があり、そこで自分が弾きたくても弾けない曲を難なく弾いてる同じ年くらいの子。あの子に弾けるんだからと練習をしたが全然思ったように弾けない。ヤケになり主人公はヴァイオリンを辞めた。
香穂子が頑張っている姿を見て、自分ももう一度頑張ってみようかなと父親が使っていたヴァイオリンを使う。

「日野さんは、地上に舞い降りた天使…いや、陸に上がった人魚姫だ」

そう彼が言っていたと誰かから聞いた。
鳥肌モノののくっさいセリフは彼の本心だ。それは傍から見てても分かる。あのご執心ぶりを見れば。

「日野さ〜ん!」

お昼のカフェテラス。奥のテーブルでランチ中の私達に手を上げて声を掛けてきた。

「呼んでるよ、香穂子」
「いや、分かってるんだけど…」

呼ばれた事によって大注目な私たち。中にはチクチクする視線を送る人もいたりする。だって、香穂子を呼ぶ彼が、パーフェクト人間だから…。

「日野さん達もここで食べてたんだね。良かったら一緒に食べてもいいかな?」
「えっと…由佳…」
「私は別に構わないよ」
「よかった。ありがと、片瀬さん」

平然を装いながら彼を席へ促した。

ニコニコ笑顔で座る彼は、加地葵。先日、香穂子のクラスに転入してきたんだけど、噂によると香穂子を追いかけて難関の国立男子校からこの星奏に来たんだとか…。
そんな学校から来たって事は頭もいいわけで、その上イケメンで長身でテニスもすっごく上手で誰にでも優しくて…。そんな彼に想いを寄せる人は少なくない。…私を含め。

「由佳…由佳、聞いてる?」
「え…あ、ごめん!ぼーっとしてた。なに?」
「体育祭。由佳も組別対抗リレーでるんだよね」
「うん、でるよ。…ん?『も』って?」
「僕もでるんだ、リレー」

ご飯を食べながら、加地君が自分を指した。

「そうなんだ。じゃあ敵同士だね!負けないから」
「うん。お互い頑張ろうね」

柔らかい笑顔。あなたはその笑顔でどれだけど女子を射抜いてきたんですか?そんなに私の寿命を縮めたいんですか?
でも、そんな私の思いなんて届くはずもない。だって彼は、香穂子しか見てないから。



***




「では、各チーム練習開始」

先生の号令で並んでいた生徒が散り散りになる。体育祭前って事で、体育の授業は各自出場種目の練習にあてられる。

「土浦〜。トラック空いてるからリレーの練習しない?」
「あぁ、やるか」

組対抗リレーは各クラス男女一名ずつ出なければならない。5組からは私と土浦だ。

「今年もやるの?佐々木君とのカケ」
「あいつが勝手に言ってるだけだよ」
「とか言いつつ、気は抜けませんよね〜。あっちには加地君がいるし」
「…」
「加地君よりカッコイイとこ見せたいもんね〜、香穂子に」
「ッ片瀬!!」

ちょっと顔赤らめちゃって…土浦かわいい。なんて事は本人に言えないけどね〜。
一学期にやった学内コンクール。香穂子と土浦はその出場者だった。それが縁で知り合って、いつの間にか土浦は香穂子に惚れてしまったみたい。本人から直接聞いたことはないけど、小学生の時から土浦とは付き合いあるもん、すぐ分かる。

「お前も、人の事言えねえんじゃねーの?」
「…はて?なんの事かな?」
「とぼけても無駄だって」

手の内がバレてるのはお互い様…ってか。

「だって…、叶わないもん」
「…お前らしくないな。勝負事には俄然燃えるタイプだろ」
「それとこれとは話が別。どう見たって…負けはみえてるもん」

あの真っ直ぐむけられた瞳は、香穂子しか見えてないから。

「…だから、リレーは絶対に勝ちたい!!」
「そう繋がるのか…」
「そう!さぁ、練習しよっ」



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