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___教えてくれ。どうやったら君を救えるのか。
あれやこれやと手を尽くして尽くして、先が見えなくなってしまった。ぐるぐると吐きそうになるほど無限に繰り返されていく世界の中、
どうしても君を死なせたくないんだと奔走した。だってそれぐらいしか思いつかなかった。色々な人の死や生を目の当たりにしてただ一つだけ手に入れてないもの。それは君の生だった。
突然閉じ込められたコロシアイという檻の中。同じく捕まった小鳥たちは自分の非凡な才能を駆使してまわりを疑い、殺しはじめる。そこからは負の連鎖が永遠に広がっていた。
だけど一羽だけ連鎖に関わらない者がいた。その言葉は他者を愚弄し、誑かして、時に人を追い詰めた。しかし自分は手を下そうとしなかった。卑劣?汚い?
それは彼に限ったことだろうか。それ以上に残虐な殺し方をしたものもいたではないか。
だが彼はただ人を利用するだけじゃなかった。最後に檻が開け放たれる前に、必ず彼は自らその命を絶って幕を下りるのだった。
そして異常と言えたのは私の存在も同じだ。どうして何度も何度もこの世界をさまよい続けるのか。どうして脱出できたと思ったとたん一番初めに戻されてしまうのか。
いっそのこと殺してほしいと思った。仲間が何度も死んでいく姿を見て正気を保てる者なんていないだろう。そして何度か死んでみた。だけど状況はいつまでも好転しなかった。
正直、気は狂っていたのかもしれない。少なくとももはやまわりにいる仲間を仲間として、人としては認識できなくなっていた。死んだとしても次があるからいっか、と楽天的にさえなっていた。
その中で彼に執着したのはほかでもなく、彼だけが他と違ったから。助けてくれと心の中で手を伸ばすのにのらりくらりとかわされる。
そんなつかみどころのない一面もまた彼の魅力だった。だから変わらない景色を繰り返すことになってもなんとか私は踏みとどまることができた。彼を救うことができれば、世界は変わる。私も救われる。
そう思っていたのに。
…ここはどこ?どうして私は見慣れない学校の前に立っているの?どうして外に出られているの?呆然と立ち尽くす私の右手に握りしめられた紙切れ。それは希望ヶ峰学園への招待状。
もう訳が分からなくなった。だってさっきまで私は人の死を見ていたのだ。あの場所に閉じ込められていたのだ。…彼を、救おうとしていたのだ。
解放されたのかもしれないのに、まったく気分は晴れない。…あれは夢だったのか。…あれ?そもそも私って何?私って、誰だっけ。
降りゆく雨の中。私は自分が泣いていた理由すら思い出せなくなってしまった。