stage2




最近の携帯のゲームは便利だ。数年前までパソコンでしていたようなゲームがこの小さい端末でできるようになって、ゲーム好きの私はハッピーだ。ただしバッテリーとパケット代がとてつもない速さで減るからモバイルバッテリーと母親に土下座する勢いで買ってもらったポケットWi-Fiは私の神器と化している。
最近始めたオンラインゲームにのめり込んだ私は割と軽い気持ちでギルドを作ったのだがそこになんとまぁ知り合いがいたなんていうことが判明して楽しみが倍増した。それにその知り合いがあの孤爪研磨くんらしいのだから。
いつも通りダンジョンを探索して、デイリーイベントまでの時間をつぶしていたら画面左上に“コヅメ”からチャットがきているという通知が見えた。


コヅメ:〈こんばんは〉

トサカヘッド:〈こんばんは!黒尾から聞いた?〉

コヅメ:〈クラスメイトの・・・〉

トサカヘッド:〈そうそう。まさか身近にいると思わなかった。これからもよろしくね〉

コヅメ:〈うん、よろしく〉

トサカヘッド:〈あ!今日のイベントだけどさ・・・〉


戦闘しながらチャットができるって素晴らしいと思う。これを考えた人にほんと私なんかコーヒーとか奢ってあげたい。 そんなこんなでデイリーイベントは研磨くんの力を借りていつもよりワンランク上のボスを倒すことができた。私は俄然押せ押せ攻撃タイプ。攻撃は最大の防御派だからパーティーも攻撃力が高いか全体攻撃に長けてるかで選ぶけど、研磨くんは魔法メインのバランスのとれたパーティーだった。特に回復キャラがいるのがありがたくて(回復キャラすらパーティーに入れない私もどうだか)なんともスムーズにダンジョンクリアできて、とても良い勉強になった。うん、これでこそオンラインゲーム。すごく充実感で胸熱になった私は携帯を握りしめたままスヤァと寝落ちしたのであった。充電せずに寝て、起きて電源付かなかった時は悲鳴上げたけど。



「何ニヤニヤしてんだ」
「あ、黒尾おはよう」
「おー」
「研磨くん良い子だね」
「ん?会ったのか?」
「ううん、ゲーム内のチャットでお話しした」
「あーなるほど」
「黒尾の幼馴染っていうから性格の悪い子がくるかと思ってたけど普通に良い子だったわ」
「電力泥棒してるのチクろうか?」
「ゴメンナサイ」


スヤスヤ眠ったおかげで目覚めはバッチリだったが相棒は目覚めてくれなかった。なのでちょっと教室の隅にあるコンセントを拝借して電力をちょこっといただいていたのだがなんと目敏い黒尾鉄朗。この間電力泥棒した同じクラスの武田くんが携帯没収されてたの見たんだけど、さすがに没収されるわけにはいかない。10時からあるイベントに参加しないと。携帯を開くと充電は52%とすごく微妙だったがバレた時を考えて充電器を抜いてニヤニヤしているトサカヘッド野郎の後ろに座った。


「てかみょうじって研磨のこと知ってんの?」
「知らなかったけど毎日黒尾が研磨くんの話するから知り合いになった感じになってた」
「そんなに俺研磨の話したっけ」
「うん、ほんとホモなんじゃないかってくらい」
「オイコラ、物騒な単語聞こえたぞ」


まぁそれだけじゃないんですけどね。っていう言葉は心の中に呟いておいた。


170329

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