Chapter8 〜修練〜





それから三日。

白哉と冬獅郎はあっという間にコントロールを完璧にして。

それから二人で修行していた。

冬獅郎は転換率と集束率に基づいて、氷輪丸での戦闘効率や、まだ操り切れない九頭の龍をどう動かせば御し切れるか、考えながら。

白哉も、無駄な霊力を悉く使わず、変化を見せた千本桜の力を扱える様にと。

勿論、無理の無い程度に。


他の隊長達も殆どがコントロールを覚え、修練として打ち合っても、周囲に影響の出る様な霊圧は発さなくなった。

鬼道系が得意な桃と七緒も、少し遅れて御し切れる様になっていた。

しかし、問題は普段から霊圧を垂れ流している戦闘狂で。

数値化しているのだから、総霊力も霧散率も拡散率も、集束率も転換率も分かるはずなのに、一向に進まない。

この数値では、戦闘になった場合、周囲にの者に悪影響を与えないとも限らない。

更木とて、潜在霊圧まで力が上がっているのだから、いつもの様に霊圧を垂れ流したまたま、戦闘に出せるはずも無い。

仕方ないと、彼の制御装置に半分の霊圧を封じさせ、斬術の稽古を付けていた。

この世の鉱石の中で、最も硬いこの石を切れれば合格という、他とは違った修行に、更木は自棄になって打ち込んでいた。


終盤にもなれば、皆が半ば疲れを見せ始める。

それを保たせようと、自信の無さそうな七緒と桃に、オリジナル鬼道教えてみたり。

京楽と浮竹を全力でぶつけさせてみたり。

黒縄天譴明王を操り切れていない狛村に、斬魄刀を具象化させて、対話させてみたり。

やちるは未だ健気に的へ向かって鬼道を放っている。

しかし、ここへ来てから約九日。

皆の実感は薄いが、確実に強くなっている彼等に微笑んで。
一日寝ていいよと許可を出した。


恐らく此処から出てしまえば、また慌ただしい日常が待っているのだろうから…。


漸く外の日が昇り始めた頃。

玲はいつもより早めに起きて労いのつもりで、普段より豪勢な料理作っていた。

最後なのだから、少しぐらい羽目を外しても良いかと、以前買っておいた銘酒と共に。


調理場から出て、沢山の霊圧を感じる修練場所へ足を向けると、隊長、副隊長達が揃って私に頭を下げていた。


「瑞稀さん、今まで有難うございました」


「こんなに実感出来るのは、玲ちゃんのお陰だよね。本当にありがとう」


「瑞稀、すまない。元々君に畏怖を抱いていた僕にさえ、きちんと教えてくれたこと、本当に感謝している」


「世話、掛けたな」


「瑞稀。今度から師匠と呼んでも良いか?」


「失礼を承知で私も…」


「うん、玲ちゃんはお師匠様だよっ」


「やちるも!玲ちゃんやちるの師匠だもん!」


そんな言葉達に胸が温かくなって。

でも人前でそんな呼び方しないでね、と釘を刺しておく。

後ろに気配がして振り向くと、修行前とは雰囲気も余裕も、霊圧も。

何もかもが変わった、二人の姿。


「玲。私は…お前を護れる様、精進する」


「朽木!っー俺も。お前を一人になんかさせねぇから」


精神的にも何処か成長した二人にふわりと笑って。


「ありがとう」


と返した。


「今日は一先ず修行完了って事で。ちょっと手の込んだもの作ってみたんだ。お酒もあるから、偶には羽目外して、ね」


その後色々大変だったけれど。

部屋にも戻らず眠りこける死神達に毛布を掛けて。

酒の飲み方を知っている卯ノ花と白哉、蟒らしい冬獅郎に手伝ってもらって、後片付けを済ませた。


「何故日番谷まで此処にいる」


不機嫌そうな白哉の手を取って。


「良いじゃ無い、偶には。三人で寝よ」


二人の間に横になると、すぐに睡魔がやってきて。


「…好きにさせとけ」


多分苦笑してるんだろう冬獅郎の手も握って。

最後の夜は更けていった。



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