Chapter12 〜葛藤〜





次の日。


「おはよ」


集まっていた死神達の前に顔を出すと、取り敢えず乱菊に抱き締められた。


「玲!よかったわぁ!気が気じゃなかったのよ?」


「嘘つけ。お前ばっちり寝てただろうが」


「隊長。それとこれとは別ですよ〜。私制御まだなんですから。隊長みたいに寝ずに動いたり出来るわけ無いじゃないですか」


「人を化け物みたいに言うな!」


「言ってませんよ〜、被害妄想です!」


確かに彼等は霊圧が上がってから耐久力も上がった。

けれど、それが霊子変換能力も同時に上がっているからだなんて、普通の人には言えない。

卯ノ花さんや浮竹、京楽は知っているけれど。

騒ぐ十番隊主従を見遣りながら、彼等がふっと笑う。


「いやぁ、元気そうで良かったよ」


「あぁ、斬魄刀の制御は出来たのかい?」


「うん、多分?屈伏させれば卍解出来るのよね?まだしてないけど」


ちょっとやってみたい衝動に駆られた私は、割って入ってきたお爺ちゃんに止められる。


「せんで良い。お主、天照の始解、第二解放で瀞霊廷中が豪雨に見舞われた事、忘れたとは言わせん」


「あれは、お爺ちゃんの卍解で周りが焦土に変わるの防ぐためじゃない」


「その通り。儂の卍解ですら瀞霊廷が砂漠と化す。お主の最終解放など死に目にも見とうないわ」


「え〜酷い「してやろうか?」」


「誰だ?!」


突然現れた黒髪紅眼の男に、朝餉の場が騒然となる。


「あ、月読!勝手に出てこないでよ」


私の声で、斬魄刀の具象化だと知った浮竹が肩の力を抜く。


「なんだ、君が月読かい?」


「軽々しく俺の名を呼ぶんじゃねぇよ。俺は神だ。てめぇ潰すぐらい訳ないぜ?」


「現実と現の境界を払い拒絶せよ。”泡沫”」


ふわりと金銀の霧が舞って月読の姿を覆い掻き消す。

最後に馬鹿が何か叫んでいたけれど、取り敢えず放置だ。


「浮竹さん、気にしないでね。冗談だから」


―冗談じゃねぇよ!


なんて返事が返ってきたけれど。


―やっぱり創り直そうか?


心の中で脅すと黙った。


「はは…随分と恐ろしい斬魄刀だね…」


「まぁ、破壊神だし…しょうがないかな…」


少し肩を落とすと、京楽が不思議そうに此方を見つめる。


「玲ちゃん、さっきの力は、何だい?天照じゃなかったろう?」


出来れば聞かれたくなかったのだけれど。

自分が神だとか言わなきゃもう良いかな、なんて思う私は彼等をそこそこ信用はしているみたいだ。


「夢と現の境を捻じ曲げる力、とでも言っておくよ」


「またとんでも無い力を…」


「それをあっさり白状するのが瑞稀らしいな」


やれやれと首を振る元流斎と、苦笑を浮かべる浮竹と京楽。

本当は全ての事象を選択する力、なのだけれど。

物は言い様だ。

そのままそこで食事を摂りながら、元流斎に話を振る。


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