愛とはこんなに欲望にまみれていただろうか。




愛でる





「ここじゃ、イヤ、だ…」
ソファで事に及ぼうとしている銀さんをなんとか阻止しようと、少しの抵抗を見せてみる。
散々ソファで愛撫され、そのままの流れでここで大変なことをしようとしている銀さんはもはや単なる狼だ。

「すぐ、隣の部屋なんっ…だからぁ…あ!」
着物はすでに跡形もなく、かろうじて袖は通っているものの身に纏っているとは言い難く、帯と下着は随分前から床に落ちていた。
ほとんど露になった身体を見られ、初めは恥ずかしくて気が狂いそうだったけど、銀さんの愛撫に何も考えられなくなった私は途中から隠すことも恥じることも放棄してしまっていた。

「もう…ダメっ…ぁ…!」
実はもうここで二回もイカされている。
何度もイヤだと懇願しても、それは逆に銀さんを煽ることにしかならなかった。
心の片隅でこの人はやっぱりエスだった…!と思いながらも身体は正直すぎて泣きたくなる。
「指だけで二回もイっちゃって…スゲェな、もう一回くらいイっとく?」
「やっ…だ、お願い、だからっ…」
「もう挿れて、って?」
「ちがっ、あぁ…!」
しつこい程の愛撫におかしくなりそうになる。
こんなの私じゃないと思いつつもこれが本当の私なのかとも思えた。
思考が追いつかない、ただ気持ち良すぎて、銀さんが愛しすぎて。

指二本でここまでの快感を与えられるとは思わず、頭も身体も付いていけていない。
いっぱいいっぱいの私に軽く口付けをした銀さんは指を引き抜いてそばに置いてあったティッシュで愛液の付いた指を拭った。

「さーて…」
一息置く暇もなくズボンのジッパーの音がした。
まさか、まさか…
「ダ、ダメだって…!」
「ムリムリムリ!隣の部屋行く余裕もねーから!銀さんの下半身爆発しちゃいそうだからマジで移動ムリだからね?!」
すでにトランクス姿になっていた銀さんのそこは確かにとても主張して、見ているこっちが赤面してしまう程だった。

「見ての通りパンパンで痛いんだよ、だから、な?」
そんな色っぽい顔で言われても、と返す言葉を失った。
「一回したら次は布団でちゃんと愛してやるから、今回は銀さんのこの息子に免じて許して下さい」
さっきの色気はどこへやら。
いつもの銀さんのように眉を下げてニヘラと笑う。

上半身の筋肉がとても魅力的だな、とよそ見していた瞬間。
先程まで銀さんの指に弄ばれていた箇所に硬いものが当たった。
「…あ」
先が入ったかと思えば、充分な程慣らされていたそこは簡単に銀さんを受け入れてしまう。
ギシリとソファが音を立てて、二人分の体重に耐えている。

「ーーっ…」
身体に侵入してくる異物。圧迫感。それが銀さんのものだと思うとたまらなくなる。
お腹の下あたりがやけに熱くなるのを感じて、私は喘ぐことしかできないでいた。
「うわ…やべ、これやべぇ」
銀さんが覆い被さって私の耳元で囁く。
その声はとてつもなく男の艶を含んでいて、耳の奥までイかされてしまいそうだった。

「先に、謝っとくわ…これ動いたら多分、すぐイっちまう…」
今度は情けない声でそう言うと、私の腰の奥深いところが疼いた。
「いい、よ…」
私の了承を待っていたかのように、そう言うと銀さんは腰を打ち付けてくる。
その衝撃に脳まで揺れる。
「はっ…」
銀さんの短い息が耳元を掠めて私を余計に乱す。

目の前にあるたくましい胸板
視界に入る筋肉の付いた腕
敏感なところばかりを探る骨ばった指
動く度にふわりと色香漂う汗の匂い
頬に当たる熱い息遣いに漏れる短く低い声
重なる腰に当たる皮膚の感覚
私にかかる愛しい人の体重
全てが興奮の材料となる。
何より、この人のモノにされてしまったと言う感情が私の心臓を鷲掴みにする。


「やべぇ、ちょっとマジで、イきそ…」
宣言通り、銀さんはもう頂点に達してしまいそうらしい。
「ん…」
余裕のない私は返事にもならない言葉で返した。すると銀さんはさらに強く動き始め、これ以上は私もヤバイと身体が訴えだした。

「はっ…銀、さ…ん!」
強く揺さぶられ、頭は銀さんのことしか考えられなくなっていた。
銀さんが上体を起こしたと思うと腰を持ち上げられてさらに奥を突かれる。恥ずかしい格好をさせられても今はそれどころじゃない。
死ぬほどの気持ち良さと、目の前の銀さんの余裕のない顔が私の目に焼き付いていく。
年季の入ったソファが鈍い音を立て、それと同時にお互いの肌がぶつかる音がやけに耳に残る。

数回腰を打ち付けると銀さんの身体に力が入るのが分かった。
一瞬の間を置いて私から自身を引き抜くと、その先端から白濁の液が飛び散った。
生々しい光景に私はさらに欲情してしまう。目の前で大好きな人が私の身体でこうなってしまったことにとてつもない満足感と優越感を覚えた。

「っは…!はぁ…!」
まさに運動した後のように銀さんは短い息を切り、肩を揺らして息を乱している。
意識がフワフワとしていた私はそれをぼんやりと下から眺めていた。
呼吸が整った銀さんは頬にキスを落としてくれる。
だんだんと意識が戻ってくると、お腹に掛かった銀さんの体液が先程まで温かかったのに徐々に冷えていくのが分かった。

「わりぃ…色々と…」
息のかかる位置で情けない声を出して謝られた。
「いろいろ?」
「…早かったことと、あと…ゴムし忘れた…」

「…ああぁぁ!!」
またまた前言撤回。
銀さんはここまでだらしのない男だったのか!



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