いただきます。






ご飯食べてる最中の来客にはもっとイラッとする






「さぁて、またこのままここでヤっちゃう?」
そう言った銀さんが吐息の当たる近さでニヤリと笑う。ここ、と言うのは居間のソファのことで、私たちが初めてことに及んだ場所でもある。

「や、だ!」
「んなこと言っちゃって〜初めてヤっちゃったとこだからいつもより興奮しちゃうかもよ」
着物の隙間から手を入れられ太ももを触られる。銀さんの無骨で大きな手が内ももを撫で上げてくる。

「ちょ、ちょっと待ってよ!ダメだって!新八君たちいつ帰って来るか分かんないんだし!」
「最中だったら気利かしてくれるって」
そんなこと言ってる間に下着だけ膝に下ろされた。

「ちょっと…!嘘でしょっ…」
私はソファに座ったままの格好で、着物の下を捲られそこに銀さんが頭を入れて来た。ふわふわとした髪の毛が内ももに当たり背筋にゾワリとしか感覚が流れる。

「もうちょい腰引いて脚上げて…」
「や、やだやだっ…」
脚を引っ張られてズルリと腰がソファに沈まる。
自動的に腰が上向きになって銀さんの思い通りの体勢になってしまった。
「はっ…、すげぇ、丸見え」
銀さんのその言葉だけでイかされそうなる。
そんな顔でそんな声でそんなことを言われてしまったら、羞恥心も混じり下っ腹の辺りがズクンと脈を打った。


銀さんの器用な舌で敏感な箇所を攻められる。その度にたまらない気持ちが込み上げてくる。
どうしていいのか分からない、ただただ気持ちいいと言う思考しかなくて、どうしていいのか分からなくなっていた。

「う…、銀さ…っ」
「わりぃ、時間ねーからもぅ挿れるわ…っ」
ズボンのジッパーを下げ、軽くズボンを下げた状態なのを見た次の瞬間。銀さんの重みがズシリと私にかかった。
それと同時に下半身への大きな圧迫感と強烈な快感が襲ってくる。

「あっーー」
急なその大きな感覚につい大きめの声が出てしまった。
銀さんのものが私の中に割って入ってくる感覚が何とも言えなくて、肩や背中にぞわぞわとした感覚が侵食し、今この人のものになっていると言う気持ちで頭がいっぱいになった。

「あんま声っ…、出すなよ…」
銀さんもだいぶ切羽詰った顔をしていた。
私のでこんな顔してくれてるんだなぁと思うとそれだけで胸がいっぱいに満たされる。
「この体勢、すげぇ奥まで入るな…」
「み、見ないで、よっ…」
結合部分をしっかり見られ、さらに恥ずかしさが込み上げる。
銀さんと何度も体を重ねても毎回恥ずかしいのは変わらない。
それなのに銀さんは遠慮なしに私の体や心を開発していってしまうのだ。


「っ…!」
「どーしたの銀さん?」
「なんか…足音聞こえねぇか」
「え…」
この状況で余裕なんてなかったけど、銀さんの急なトーンの変化に只事ではないのだと耳を澄ませてみても、私の耳には特に何も聞こえなかった。
目の前の銀さんは先ほどの色香に満ちた表情とは打って変わって、蒼白の顔をしていた。

「銀さ、ん?」
「クソォ!!アイツら帰って来やがった!!」
「え?!うそ!」
「定春の地鳴りのような足音が聞こえんだよ!なんであと五分待てなかったんだよアイツらっ…!」
「やっ…銀さん動かない、でっ…」
銀さんがオーバーリアクションで腕や上半身をやたら動かすので私にまで振動が伝わってしまい、こんな時に変な声が出てしまった。

「おま、そんなイヤらしい声出すなよ!生殺しじゃねーか!」
「やっ…ダメっあっ…!」
ヤケクソなのか銀さんは何度か腰を打ち付けて来る。
その衝動にまた気持ちよさが込み上げてきて私の身体は敏感になっていく。
「あっあっ…」
「だー!クソ!」
何度か腰を打ち付けた銀さんが急に私から離れた。もちろん繋がっていたものがズルリと抜け、急に外気に晒された粘膜や肌はひんやりとした。
「え…銀さ…ん?」

ドタドタとそのままの格好で銀さんは居間を出て行き、少し後でトイレのドアが強めに閉まる音がした。
私はと言えば取り残された部屋でポツンとなり、とりあえずまだ熱を持った体を虚しく思いつつ、衣服を纏わせ整えた。
すると玄関から聞き慣れたドスンドスンと言う音が近づいたかと思うと、玄関戸が元気良くあいたのだ。

「名前ー!居るアルか?!仲直りしたアルか?!」
「ちょ!神楽ちゃん!急に入っちゃダメだって!ちゃんと状況を確認しないとマズイよ!」
案の定その足音は定春と神楽ちゃんで、後から新八くんが控えめにパタパタと追い掛けて玄関に入ってきたようだ。
新八くんの的確な警告には聞く耳持たず、神楽ちゃんは居間に強引に入ってきた。

「名前!心配して早く帰ってきたネ!って、アレ?銀ちゃんは?」
「あ…えっと…お腹痛いって言って、トイレに篭ってる…」
「こんな時にゲリかよあのマダオ!仲直りはちゃんとしたアルか?!」
「う、うん、大丈夫だよ」
「全くよくケンカするバカップルアル!世話が焼けるアル!」
「ごめんね神楽ちゃん」
「そんなこと言って、ファミレスでソワソワしてたの誰だっけ?」
向かいのソファに腰掛けた新八くんがくすくすと笑って神楽ちゃんを見ていた。
「ウルセーよメガネ!メガネ割って黙らせてやろうか!」
「メガネ割れたところで黙らないから!何でメガネが喋ってるみたいになってんの?!」

神楽ちゃんは新八くんに向かって毒を吐き出した。
彼女は彼女なりにいつも私たちのことを心配してくれている。
新八くんも気を使ってくれてあたたかい目で見守ってくれている。
いつも迷惑かけて悪いなぁとさえ思う時がある程、彼ら二人はずいぶん大人な対応をしてくれるのだ。


「あ、そういえば来週のクリスマスに下で忘年会しようって話になったんですよ!もちろん名前さんも参加してくださいね!」
お茶を入れてくれた新八くんが嬉しそうにこちらを見て話しかけて来てくれる。
「クリスマスって平日だよね?」
「そうですけど、もしかしてお仕事ですか?」
「うん、シフト入ってる」
「夜からだと思うんで、お仕事終わったら来てくださいよ」
「そうアル!名前が居ないとつまらないアル!」
「じゃあ、差し入れ持ってお邪魔しようかな」
「チキンがいいアル!骨付いたチキン!」

神楽ちゃんはどうやらうちのお店のフライドチキンがお目当てのようだ。
クリスマスはきっと沢山売れるだろうから発注も来週は沢山しておかないとなと頭の予定に組み込んでおいた。

「神楽ちゃんはサンタさんにクリスマスプレゼント何頼むの?」
「名前、サンタ信じてるアルか?!」
「え?!」
ここはどう反応するべきか。神楽ちゃんってサンタクロース信じてる子だっけ?どうだったっけ?世で言う女子中生な訳だからさすがに信じていないだろうか。
でも神楽ちゃんってすごい純粋な子だし。
脳内の記憶を探ってみたものの、どうしても思い出せず神楽ちゃんの反応を伺ってみることにした。

「サンタさんは…いる、でしょ?」
「名前は子供アルなー、サンタなんか居ないアル」
「そう、なの…?」
新八くんの方をチラッと見てみれば、新八くんも苦笑いをしていた。
過去になんかあったのかな?勘繰ってみてもやはり思い出せないのでその場は神楽ちゃんに合わせることにした。

「神楽ちゃん欲しい物なんかあるの?」
「酢昆布一年分!」
一応候補には入れとこう、続いては新八くん。
「新八くんは?」
「え?!僕ですか?」
「うん、なんか欲しい物ある?」
「いや、特に無いですよ」

新八くんが遠慮気味に言うのはいつものこと。
これは銀さんやお妙さんに聞き込み調査をしなきゃいけないな、とこれもまた頭の予定表に書いておいた。

「そーいや、銀さんは何が欲しいんだろうね」
「あの人はどーせお金とか言うと思いますよ…」
「夢も希望もない男アル!男はロマンに生きるとか思考がない根っからのマダオアル!」
「確かに…」
聞いた私が馬鹿だった。

そして聞かなくても分かってたことでもあった。銀さんが欲しい物なんて大概お金か甘いものだ。
クリスマスだからケーキはあるとして、次に望むものなんて言ったらお金だろうね。
間違いなく。
私は日頃お世話になってる万事屋のみんなにクリスマスプレゼントを考えていた。
大したものはあげられないけど、何か形に残るものをプレゼントしたかった。

「俺は欲しい物あんぞー」
ガラリと居間の戸があけば銀さん登場。
どことなくスッキリした顔で戻って来たもんだから、私はなんとなく照れてしまった。
「銀ちゃんはどーせお金ダロ」
「バカヤロー女に金せびるほど落ちぶれちゃいねーよ」
フッと笑う銀さんは何を考えているかいまいち分からない。
「んじゃ何が欲しいアルか?」


「仕事をください!」


「…」
「…」
「…やっぱりマダオアル」
シーンとなった中、神楽ちゃんの声がポツリと響いたのだった。




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