「なんでこんな寒い時に初詣なんだよ!」




あけおめことよろ





大晦日からドンチャン騒ぎをして、年が明けて一時間が経つ。
お子さま組の新八くんと神楽ちゃんは万事屋でぐっすり中。
ドンチャン騒ぎをしていたスナックお登勢を後に大人組は初詣に来ていた。

「しかも人多っ!新年早々寒いし人多いしいいこと無しじゃねーかよ!よし、帰ろう!帰ってコタツ入って寝よう!」
確かに初詣と張り切って皆来るから人はとても多い、そして雪がチラつく夜は更に寒い。

銀さんは赤と黒のコートと言うか半纏の下にこっそりダウンジャケットを着込んでいるのを私は知ってる。
そして青いマフラーを首にグルグルと巻き付けイヤーマフと手袋をして完全防備しているにも関わらず、寒い寒いと駄々をこねていた。
因みにお腹と背中にはカイロも入ってるのも知ってる。

「冬なんだから寒いのは当たり前でしょ、ここまで並んだんだからもうちょっと我慢しようよ銀さん」
「名前、お前は若いからいーよ!俺はもうこういうの無理なの!老体には無理なの!帰って寝たい!」
「大して歳変わんないでしょ!」
「一個二個の差がでけーんだよ!さぁ帰るぞ!」
「ワガママ言わないの!」
「アンタらうるさいよ!」
参拝待ちの大行列。
そんな人混みの中で私と銀さんは言い合っていた。
そこに割って入って来たのはお登勢さん。

「オメーこそうるせーんだよババァ!ババァのくせに張り切ってんじゃねーよ!老人は帰ってコタツでも入ってろ!」
「銀さん大声出さないの!」
「銀時様、三センチ前に進みましたので進んでください」
「お前はさっきから細けーんだよっ!誰だよたま連れて来たの!寒さで壊れたんじゃねーのか!?」
今度割って入って来たのはたまさん。

参拝者の列が少し進むたびに進めと促してくるので、さすがの銀さんもいい加減うんざりしているようだ。
「私は壊れていません、機械は熱には弱いですが寒さには強いので」
「どーでもいいから黙っててくれ!」

それから更に一時間弱、銀さんはブツブツ文句を言いながらも最後まで一緒に居てくれた。
去年は有難うございました、と今年も皆が健康でいられますようにと少し奮発した百円のお賽銭を投げ入れる際に、銀さんがすごい恨めしそうな目で見てたけど無視した。
そんな当の銀さんは三円を賽銭箱に放っていた。

「三円って、また妙な数だね」
「これは俺と、今頃あったかいとこで寝てるノンキなお子さま二人の分だよ」
なんだかんだで優しいなぁ、と思いながら笑みが溢れる。
銀さんのこういうところが私はとても好きだ。きっと今年も沢山の銀さんの優しさに触れられると思うともう幸せな気分になってくる。

去年、この街に来てから銀さんと出逢い、恋に落ちて、想いを告げて。
それからそれがあれよあれよと成就してしまって、今はこんなにも銀さんの近くに居られる。
とんでもない奇跡が起きてしまったのだ。
私は去年とんでもなく人生に置いての運を使い果たしてしまったと思っていた。それでも今年が始まったばかりの今、すでにこんなにも幸せな気持ちになっていていいのだろうか。

「銀さん!おみくじ引こうよ!」
「新年早々金の無駄だからやめとけ」
「運だめしだよ、銀さんの分払ってあげるから」
そう言って私は銀さんの手を引いて二百円を巫女さんに渡した。
木の入れ物をガチャガチャと振り、逆さにすると一本の棒が出てくる。
その棒に書かれた数字を巫女さんに告げると小さな木棚に入っている紙を一枚渡された。
それを開けて目に入った文字を見て私の幸せオーラは一気に冷めていく。

「う、うそ…」
「まさかお前」
「銀さん…どうだった…?」
「俺は……お!大吉〜」
金の無駄だとか言ってたわりに結果が良かったからか、ずいぶん嬉しそうに紙を私に見せてくる銀さん。私の百円なのに!
それとは間逆に私はといえば、言いだしっぺのくせに凶というとんでもないものを引いていた。

「お前意気込んでたわりに結果散々だな」
「…」
「まぁ、ホラ、あれだ、これ以上下がることがねぇってことだろ」
銀さんなりの励ましに一理あるな、と私は少し元気が出る。
でもそんなこと言いながら銀さんの顔は少し笑っている。
これは帰って新八くんや神楽ちゃんにネタとして笑い話にするつもりだろう。それを想像するとまた気分が凹んだ。

「まぁそんな落ち込むなって、今年も沢山すげぇいいことしてやるから、な?」
「な?じゃない!そんなの、なんの励ましにもならないし!」
肩を組まれて引き寄せられる。
銀さんの匂いと残ったお酒の匂いがふわりとした。

「俺が大吉、お前が凶、足して二で割ってみ?」
「…中吉?」
「そういうこと」
今年もやっぱり、銀さんは私にも優しい。
「銀さん、今年も宜しくお願いします」
「おー、こちらこそ」
お互い寄り添って神社の入口の方へ向かう。
いつの間にかはぐれていたお登勢さんとたまを鳥居のところで見つけて、またスナックお登勢へと皆で帰った。

そして帰って飲み直した私たちは気付けば朝にはスッカリ酔い潰れて寝ていて、それをお子さま組に起こされお正月からまた賑やかな一日が始まるのだった。
「名前!お年玉くれアルー!」


A Happy New Year!






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あけましておめでとうございます。
緋色の日々シリーズはこれで終りとなります。
読んでいただいて有難うございます。
また次のシリーズもお付き合いいただけると嬉しいです。

2014/1/10
西島


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