朝起きて、私は少し後悔をした。




運転は安全運転で行きましょう





「いやぁ、新たな世界だったな昨日は」
朝一機嫌良く起きた銀さんは背伸びをしていた。
しかしその格好はいつもの銀さんではなく、それなのに彼…彼女はいつもの癖なのか上半身裸のままだった。
その為に形のいい、無駄に大きめの胸が揺れていた。

「ぎ、銀さん、前…」
「あ、まだ戻ってなかったか…しっかしコレあるとなんか色々ジャマだな」
「ジャマって…」
よく言うよ、初めの頃は自分の胸見て鼻血出してたの知ってますけど?
それが今じゃ二回目ってのもあるのか、すっかり慣れてしまい銀さんは自分の豊満な胸を疎ましく思っているようだった。

女としては大きいのは結構羨ましい。
大きい人はだいたい不便だとか肩が凝るとか、コンプレックスだったりするらしいけど、小さい方から見たらそれは贅沢な悩みなのだ。
それを持ち合わせていながらも、疎ましく思っているであろう銀さんに女としてのプライドも意地もズタズタにされた気分だ。

「名前ちゃん、昨日はなんかスゴかったな〜」
上半身裸のままの銀さんはまだ布団で横になっていた私の上にニヤニヤしながら乗っかって来た。
いつもなら男性である銀さんに包み込まれ、幸せに浸りうっとりしてしまう、はずなのに今日に限っては私の胸には大きく柔らかい胸が乗っかっていた。

「べ、別にいつも通り、で、しょ?ていうか、胸…」
少しながら動揺してしまう。
いくら相手が銀さんと言えど、女の子とそう言う関係になってしまった訳だしこの状況もどうかと思う。
女同士が布団の中で、しかも裸でくっつきあっているなんて。

「いやいや言いながらすっげぇ乱れてたじゃねーの」
「そんなことないし!」
誤解を生む言い方をしないで欲しい。
それじゃまるで私が女同士の方に目覚めてしまったみたいな言い方じゃないか。

「ぎ、銀さんだって…!」
「俺ァもうめちゃくちゃ気持ちよかったぜ?でもやっぱ最後は名前に抜き差ししながらイキてぇからなぁ、女の体が敏感なのはよく分かったが、なんか物足りねぇんだよなぁ」
「そりゃぁ銀さんは…」
ここまで言って我に返る。
この先は言っちゃダメだと思ったからだ。

「なんだよ」
銀さんの体は女の子なものの、やっていることはいつもと変わらなかったからだ。
きっと本当の女側を知ってしまったら驚くだろうと思った。けれどそれは言ってはいけない。
教えてはいけないと思った。
銀さんのことだ、きっと試したいと言い出すに決まってる。

「おーい名前ちゃん?」
「な、なんでもないからどいてよ!そして服を着なさい!神楽ちゃんが起きて来たらどうするの!」
「まだこの時間だ、起きてきやしねーよ、だからな?もう一発…」
あ、と思った時にはもう私の平手打ちが銀子さんに炸裂していた。
パーンといい音がしてから、銀さんとは言えど女の子を叩いてしまったことに罪悪感が湧いて来る。

「名前ちゃんひでぇ!俺の処女膜は名前ちゃんのものなのに!」
「そういうこと言うのやめなさいっ!」



「アレェ、旦那ァその格好どうしたんですかィ」
「おはよ、総悟」
うい、と軽く挨拶してくれた総悟はいつもの隊服ではなく、アロハシャツに短パンと言う出で立ちで私たち四人と合流した。

「あー、まあ色々あってだな…」
バツが悪そうに麦わら帽子をかぶった銀さん、もとい銀子さんが苦笑いを浮かべていた。
「銀ちゃんはすぐ拾い食いするからこういうことになるネ」
「拾い食いじゃねーよ、お前や定春と一緒にすんな」

「どーせ浮気でもして性病うつされた結果がソレじゃねェんですか?ウイルスはウイルスでもとんでもねェもんうつされて来たってオチでさァ、名前こんな性病野郎とはさっさと別れなせェ」
「テメーは何も知らねーくせに憶測で物言うな!」
「まあまあ銀さん!今日は楽しみにしてた海なんですから、仲良く行きましょうよ」

このメンバーだと一触即発なのは新八くんも充分承知のようで、すかさず止めに入ってくれる。
そしていつもの慣れた様子で場を宥め、海に向かう為に真選組の隊車であるパトカーに皆で乗り込んだ。

「いや〜、車があるってサイコーだな〜」
「銀ちゃんもっと端に寄るアル!狭いネ!今は女子なんだからそのユルユルの股閉じろヨ!はしたないアル!」
「人前で平気でゲロ吐くような女子に、はしたねーとか言われたかねーよ」
「あの、いいんですか沖田さん…?パトカーなんて借りて来ちゃって…バレたらまずいんじゃ…」
「一台くらい拝借してもなんてこたねェんで安心してくだせェ、最悪名前のせいにして始末書出しとくんで」
「ちょっとぉぉぉ!」
「サド野郎、お前はアッシーアル、安全運転しろヨ!」
「テメェ今なんつった、一回降りやがれ腐れチャイナ」
「うっせーんだよ!早く出発しろ!」




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