「海アルー!!」




スイカ割り、それは青春





猛暑、足を焼くような熱い砂、照り返す太陽に肌をもジリジリと焼け、今にも丸焦げになってしまいそうになっていた。

「なんでこんな暑い中、余計に暑いとこに来なきゃなんねんでェ」
「水着のギャルを見に来たに決まってんだろ」
「旦那ァ、あんた今の自分の格好に自覚ありますかィ?」

総悟は麦わら帽子に首にはタオルを巻き、アロハシャツと短パンを身に纏った出で立ち。
対して隣に居る銀さん、もとい銀子さんは綺麗な脚を見せびらかすように短めの短パンを履いて上には男物のTシャツを着ていた。

「その格好はエロすぎますぜ、今回に至ってはアンタは見る側じゃなくて見られる側でさァ」
「別に見られるのは構わねーが、これって俺が水着ギャルジロジロ見てても犯罪になんねーんだよな?!大丈夫だよな?!女同士だもんな?!」
「銀さん目がやらしいですよ…ほら、テント持ってって下さい、沖田さんはパラソルとクーラーボックスお願いします」
新八くんは折りたたみ椅子を抱え、お登勢さんに貰った大きなスイカを持っていた。

「新八くん、私スイカ持つよ」
「あ、ありがとうございます」
大きなスイカは後にスイカ割りをしたいと言う神楽ちゃん至っての希望だった。
それを聞いたお登勢さんが知り合いにスイカを育てている人がいるからと、頼んで貰ってきたものだった。

「ところでこの大きいスイカ、どうやって冷やすの?」
「それがいいところがあるんだよなー」
銀さんは私からスイカを受け取ると賑わっている海の家に向かっていく。
少し経って戻ってくるとその手にスイカはなかった。

「あの店で長谷川さんが働いてる、スイカ預けてきた」
「え?!長谷川さん居るの?!」
「マダオこんなところでも働いてるアルか!」
「挨拶くらいしておかなきゃ」
「後にしとけ、なんか忙しそうだったから」
そう言われて仕事中に邪魔するのも悪いと思い、長谷川さんを後にした私たちはテントと大きなパラソルを立て、寛げるスペースを作っていた。


「いやー海はいいな!タダだし!」
「銀ちゃん、かき氷食べたいアル」
「お前はついた早々食い気に走んなよ!女子らしく泳いで来るとかビーチバレーするとか言えねーのか」
「ワタシ日光だめアル!そんくらいの設定知ってるだろーが、銀ちゃん空気読めヨ」
「だったらなんで海行きてぇとか言い出したんだよ!!」
「銀ちゃんだってノリノリだったクセに!名前の水着姿見れるゲヘヘとか言ってた気持ち悪いヤツに言われたくないネ!」
「ゲヘヘとは言ってねーし!」

神楽ちゃんは結局テントで焼きそばやらフランクフルトやらをかっ喰らっていた。
年頃の女の子が海にきて日光に当たって思いっきり遊べないのは見てて可哀想なところもある…けど、あの食べっぷりを見てるとわりかし満喫している風にも見える。

「あのさー、名前ちゃん…」
「ん?」
「なんでビキニじゃないの?ってか水着でもないよね?」
「銀さん、水着って結構高いんだよ?」
「んなもん無いって知ってたら銀さんいくらでも買ってあげたのに!てかもっと給料上げて貰え!ゴリラにバナナでもあげて給料上げて貰え!」
「水着いらないし」
私はと言えば、日焼けしないようにUVカットの薄手パーカーに綿のハーフパンツ、そしてつばの大きな日除け帽子をかぶっていた。

「なんでそんな運動会にいるおばちゃんみたいな格好してんだよ!?もっとこう、肌を露出してさ!海でキャッキャ言う感じにはならないわけ?!」
「名前はもうババァに片足突っ込んでるんで仕方ねェんでさァ」
「おま、人の女にババァとか言うな!」

もうなんとでも言ってくれ。
この歳でキャッキャ言ってる子は言ってるだろうけど、私はそれより日焼けして将来シミそばかすお化けになる方のが嫌なタイプだ。
日焼けして痛い思いするのも嫌だし、後々の事を考えるといいことなんてひとつもない。

「名前ちゃん着替えに行こう!女子更衣室向こうにあったから一緒に入ろう!俺…私が手伝ってあげるから!」
「旦那ァ、忘れてやせんか?俺が警官だってこと」

その後、私はその格好のまま海で遊んだりビーチバレーなどをしてみんなとしこきり遊んだ。
ビーチバレーでは、最後の方は総悟と神楽ちゃんの一騎打ちになっていたけど…

お昼には新八くんが握って来てくれたおむすびを食べて、スイカ割りをすることになった。
「銀ちゃん、一番手はワタシが行くアル!目隠しするネ!」
「ばか、お前がスイカ叩いちまったら粉々になんだろうがよ」
「スイカ粉々にする遊びじゃないアルか?!」
「ちげーよ!食いもん粗末にすんな!」
「んじゃ一番手は俺がやりまさァ」
「おいおいおいおい!お前はなんでスイカ割るのに刀持ってんだよ?!何斬るつもりなんだよ?!」
「あわよくばついでにチャイナの首でも叩き斬ってやろうかと」
「やれるモンならやってみろヨ、サド野郎」

「あんな奴らはほっといて名前ちゃんは目隠しして、銀さんとあの茂みの方に行こうか」
「…まずは旦那の首から行きますかィ」
「沖田さん落ち着いてっ…!」

私は久々の休みらしい休みを心から楽しんでした。
銀さんが女の子だと言うこと意外は、今が一番幸せなのかもしれないと噛み締めながら。




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