あ、厄介なのに会ってしまった。





前途多難である





「名前ちゃん今、厄介なのに会っちまったって思わなかった?」
「思ってないです!!」
総悟と並んで歩いていると前からダルそうに歩いてくる銀さんとバッタリ鉢合わせし、咄嗟に思った事をテレパシーかなんかで当てられてしまった。
そして銀さんを見つけた時にはもう時既に遅し。総悟と手を繋いで居たのをバッチリ見られていた。

「あれ、あれれ?お二人さん……まさか」
「近藤さんに言う前に旦那に報告することになるとはねィ」
「え?マジ?マジなの?!」
「そういうことなんで旦那、今後名前を飲みに誘うのは一切やめて下せェ」
「ちょっとちょっとぉぉ!俺の唯一の女子飲み仲間奪わないでよ!俺がどんだけ日頃から名前ちゃんに癒されてると思ってんの?!それを急に奪うなんて酷すぎんだろ!」

銀さんには日頃からとてもお世話になっている。
今のコンビニの仕事も紹介して貰ったし、スナックお登勢でも週に一度ペースで仕事をさせて貰っていた。
そんな銀さんとも気心知れた仲で、日頃からよく構って貰っていた。

「名前ちゃんは皆の名前ちゃんなのよ?総一郎くんよぉ、分かる?アイドルは皆のモンって言うだろ?だから名前ちゃんも皆のモンなの!」
「イヤ、もう俺のモンなんで」
「うわぁぁ怖っ!名前ちゃんやめときな!こんな独占欲の塊みたいな男やめときな!男は心が広くてなんぼだろ!?だから銀さんにしときなさい!銀さんの心は海のように広いから!」

「アンタさっき皆のモンって言ったばっかだろ、それにそんな広くて浅い海クソつまんねェだけでェ、俺だったら狭くて深い真っ暗な海の底に連れてってやりまさァ」
「怖ぁぁぁ!!名前ちゃんとんでもねーのに捕まった自覚ある!?今ならまだ間に合うから!深海に引き摺り込まれる前に銀さんの胸に飛び込んで来なさい!」
「冗談じゃねェですぜ旦那ァ、この俺があの手この手でやっと落とした女ですぜ?それを横取りされた日にゃ俺の菊一文字が黙っちゃいやせんぜ…」
「わかったわかった!そんな目で睨まないでよ!…名前ちゃんもこの先大変だなぁ」
「本当、きっと毎晩大変ですぜ名前、覚悟しときなせェ」
「なんの話してんだよ」
ニヤリと笑った総悟に手を引かれたまま歩みを進め、手を振る銀さんを後にした。

「お前これから男と二人で会うの禁止な」
「銀さんと居る時はだいたい新八くんか神楽ちゃんが居るよ、それに飲みに行く時は長谷川さんも居るし」
「とにかくだ、旦那は要注意人物なんで今後も気を付けなせェ」
「別に今更何もないよ…」
少し呆れている私を知ってか知らずか、グイグイと手を引く総悟について行くと屯所の前に到着する。と同時に今度はタイミング良く山崎さんに出くわした。

「あ、隊長おかえりなさ……あ、名前さんも、一緒だった……ん、です……ね」
明らかに私たちの顔と繋がれた手を交互に見て何か戸惑っている様子の山崎さん。
分かります。あなたの言いたい事は分かります。

「まぁこういう事なんで、お前も今後色々と気ィ使えよ」
「え?!どういう事です?!そして気を使えってどう言う事です?!」
「察しろよ、名前と部屋に居る時は誰も部屋に近付かせんなっつー意味だよ、全くニブイ野郎だなァこれだからチェリーは」
「チェリー言うなぁぁぁ!!」

「や、山崎さん!こんな奴の言うこと真に受けなくてもいいから……!」
「え?全部冗談ですか?」
「あ、え…っと、その」
「全部ホントでさァ、今から近藤さんに話通しとこうと思ってんでェ」
「え?!局長に!?」
「そ、祝言とか諸々あるからな、早いとこ話しとかねェと」
「しゅっ!祝言んんんん?!!そうなんですか名前さん!?」
「私も初めて聞きました!」

もう何これ。ほんの二十分も経ってないって言うのに、なんでこんな話が進んでるんでしょうね?!総悟の中で何がそんなに進んじゃってるんですか?!

「そういや、土方のヤローは」
「副長なら出てますよ、近くで攘夷浪士が出たとかで」
「チッ、なんでェ折角アイツの驚いた負け犬顔拝んでやろうと思ったのによォ」
つまらなさそうに総悟は私の手を離してさっさと屯所に上がる。するとこちらを振り返り、先程とは打って変わって口角を上げて笑っていた。

「さァて、名前、今日からここがお前の家だ」
「住むとか言ってない!」
「俺と一緒に住むのがイヤだってェのか?」
「話が早すぎるって言ってんの!私ら付き合い始めたのいつ?!」
「今日」
「二十分前だよ!」
「え?!そんなさっきの話だったんですか!?なのに隊長、もう祝言の話してんですか?!いくらなんでも早すぎますって!」
「黙れチェリー、どうせするんだから後でも先でも一緒だろィ、これだからチェリーは」
「何回もチェリーチェリー言うなぁぁぁ!!」

「だいたい俺はともかく名前は歳いくつだと思ってんでェ、適齢期だろィ、これ逃したら行き遅れでさァ」
「ま、まあ……」
「この先何年か付き合ってくとこの歳の女はソワソワし出すんだよ、結婚いつするの?その気ないの?この先どうするの?!って結婚の匂いプンプン出してくんだよ、俺は名前をそんな焦りまくりの結婚願望丸出しの哀しい女にさせたくねェんでさァ」
「隊長、名前さんの事そこまで考えてあげてたんですね……」
「ちょっと、そこのドエスとチェリーくん黙ってくんないかな?なんか無駄にリアルな話でムカつくんですけど!?」

「名前、安心しなせェ、すぐ子作りすりゃあ五人くらいすぐ産めまさァ」
「何の話?!!」





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