決意

「くそっ、しつこいな」

 小屋を飛び出し草原を走る。
 走り出して数分だろうか、盗賊達はまだ追ってくる。あっちは屈強な男ばかりで、体力自慢なのか一度狙った獲物は逃がさないという執念か、諦める気配がない。草原から街道に出たものの人通りは皆無。姿を隠す建物などもなく、少しずつ盗賊達との差が縮まってる気がする。俺も舞もそれなりにスタミナに自信はあったが、いつまで経っても街は見えてこない。ちらと横目で舞を見れば少し息が上がってきたようだ。後ろには盗賊達。
 思わず舌打ちが漏れる。どうする?
 舞の体力はそろそろ危ない。俺だって無尽蔵にあるわけじゃない。
 どうする? どうしたらいい? 考えろ。考えろ。
 撃退、するか? するなら体力の残っている今だ。幸い丸腰じゃない。真剣に触った事はあるし、不思議と馴染むこの刀はきっと力になるだろう。
 ……やるか? やれるか?

「きゃっ!」

 思考を飛ばしていたからか、声に反応するのが少し遅れた。振り向くと舞が転び、盗賊達に追いつかれていた。

「舞!」
「こンのガキ! 手間掛けさせやがって」
「痛い! 離して!」

 いくら剣道部所属といっても十四歳の力で大柄な男に勝てる訳がない。学校の部活だと護身術を教わってはいないだろうから、どれだけもがいても振り払うことは難しい。


 舞の白く細い手が、盗賊なんかの汚い手に掴まれたのを見たら、


 プツンと俺の中で何かが切れた。

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