08 カフェでの休日



「くるみちゃーん!」

娘とパパと、家族水入らずで駅前のカフェでパフェを頬張っていたら、カフェのテーブル越しから娘を呼ぶ声がした。

「とどまつおじさん!」
「やだな〜くるみちゃん!トド松お兄さんだよ〜!」

カフェでバイトしているのか、テーブルを拭くナプキンを持ってくるくると可愛く表情を変えるトド松くん。あっ、一松パパが面倒くさそうな顔した。

「今日は名前ちゃん仕事休みなの?」
「うん、だからみんなでちょっとお出掛けを。」
「へぇー天気も良いからね!絶好のお出掛け日和だよね、一松パパ!」
「………。」

ふいっとトド松から目線を逸らす一松。一松の膝の上では娘が「ぱふぇおいしー」と口の回りをクリームで汚しながら笑った。

「なんかさ、一松兄さんがパパとか超和む〜」
「……絶対馬鹿にしてんだろ。」
「って言うかくるみちゃん可愛くない!?本当に一松兄さんの子どもなの??天使過ぎない!?」

いや、俺の子どもですけど。と言わんばかりの冷めた目で一松がトド松を見ると、トド松は「もうこれ以上は言わないけどさ。」と震えていた。多分一松には眼力があるのだろう。その眼力で何かトド松へ伝えたらしい。

「これからこうえんいくー!」
「へぇー、良かったね!」
「うんっ、ねこちゃんとあそんでからぶらんこするんだあ。」
「パパはちゃんと遊んでくれてる?」
「うんっ、あのね、あそんでからいっつもぎゅうってしてちゅってしてくれる。」
「…それ以上言わないで。」

娘の口を手で抑える一松を余所に、トド松はニヤニヤと笑い、私も耐え切れず笑った。一松は「何かある?」と少し震えながら私たちに言った。

「いやー可愛いよね、くるみちゃん!」
「うんうん、パパがデレるのもわかるよー」
「これから反抗期とか来たら、めっちゃ一松パパ泣くよね!」
「いやぁ、号泣どころじゃないかもしれない。」
「…反抗期とか止めてくれない。」

一松はまだ見ぬ中学生の娘の姿を想像して不安そうにしている。トド松は「面白すぎる!」と言って、更にからかおうとしてきたら、まあ一松に殴られた。

「ま、まあ、でも、幸せそうで何よりだよ。」

トド松が殴られた腹部を抑え、私たちにそう言う。確かに、幸せだ。幸せで毎日が穏やか。一松を見れば恥ずかしそうに目線を逸らす。こういうところが、好きなんだ。

「ね〜トッティ!くるみちゃんね、いもうとかおとうとほしいの。サンタさんにたのんだらくれる?」
「うーんそれは…グフゥッ!?」
「…それ以上話さないで。」
「何で!?まだ何も言ってないんだけどっ!?」

私が笑っていると、トド松くんが、「笑ってないで助けてよ!」と困った顔で言ったので、とりあえずこっそりと一松の手を握ってあげたら、すんなり落ち着いた。




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