12 私の死に場所



そんなことで、あれよあれよと私と一松の同棲生活が始まった。慣れない会社と一松との生活に不安もたくさんあったけど、毎日の生活に幸せを感じていた。アパートには猫も居て、この部屋に勝手に住み着いたのが猫のカノンだった。一松は慣れない家事を頑張ってくれて、私は前のように罵られる毎日もなく、淡々と毎日の業務をこなすだけだった。

ようやく一年間経って、私が契約社員から正規の社員になった時ーお祝いに一松がご馳走を作ってくれた。そして、プレゼントも渡してくれた。

「大したものじゃないから、その辺に落ちてたやつ。」

小さな箱の包みを開くと、それはシルバーリングで、私が無言で黙っていると「他に何か言葉ないの?」と言われた。

「だって、こんなプレゼント…」

ぽろぽろ涙が止まらなくて、嗚咽交じりに言ったら、抱き締められた。見えないところで家事をこなしながら、バイトしてくれてたんだ。「一松は優し過ぎるよ。」と言えば「名前は真面目過ぎるよ。」と返される。

「幸せにはできないけど、最期まで隣に居させて。」

私の死に場所は最初から決まっていた。

「はい。」

貴方の隣だった。




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