02 娘の朝
「くるみ、早く起きて。」
「ん〜」
「くるみ」
「やっ…まだねる〜…」
「……くるみの大好きなホットケーキ焼いたけど。」
むくりと愛娘のくるみは起きた。こういう時は、母親の名前とそっくり。好きな物があるとすぐに起きる。くるみは眠たそうに目を擦り、「くるみのほっとけーきたべる。」と言った。かわいい。
「ねぇぱぱー、なんでくるみちゃんのままはいっつもおしごとばっかりしてるのー」
ホットケーキを食べながら、くるみはふぅっと大きなため息をつく。側にいたカノンが「にゃあ」と鳴いた。
「くるみはね、ぱぱとままとかのんとずっといっしょにいたいの。」
「うん。」
「ねー、でもね、ままはおしごとなんだよ。くるみはね、ままともっといっしょにいたいのに…。」
ぽんっとくるみの頭を撫でたら、くるみは「ぱぱくすぐったいー」とけたけた笑う。さらさらの栗毛は名前に似たんだと思う。柔らかい瞳も。俺に似なくて良かったとつくづく安堵する。
「……パパと一緒じゃ、嫌?」
「…!ぱぱすきっ!」
ぎゅうっと抱き締められて、首筋に頬擦りされた。………くるみは俺のこと、かなり好きだよね。俺も好きだけど。もしくるみに変な虫でも付いたら、全力で叩き潰す。
「……ママもくるみのこと好きだよ。だから、お仕事頑張ってるよ。」
「ほんと?」
「うん…だから、くるみちゃんも頑張ろうね……。」
「はーい!」
手を大きく挙げて、にこっと笑うくるみが可愛らしい。素直な子に育ってくれたと思う。正直、名前と俺の本当の子どもなのかと疑い、何度か不安になったことがあるが、猫好きなのと人見知りでマイペースな部分は俺に似ていた。自分の愛娘と共通点を発見し、安堵すると同時に、それは名前にも共通することだと再発見して少し幸せな気持ちになる。
「ぱぱ、ほいくえんおくれるー」
「……うん、そろそろ行くから、支度ちゃんとしてね。」
「はーい!」
今日も幸せだと思う。俺にいつも幸せをくれるのは、家族だった。
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