自分のことなのにまるで思い出せないコトがある



ブレザーにリボン、ラインが一本入った黒いスカート。
桐皇学園の制服は帝光の時とあまり変わらないため、親に見せてもお互いまぁこんなものか、で終わった。
進学先は秀徳か桐皇かギリギリまで迷い、桐皇の方が通学時間が短く安心という親の言い分により決定した

そんな決め方でいいのか私…と思ったが、学力にそこまで差があるわけでもないので満足している。
セーラー服着たかったなぁという未練は少しあるけど、きっと恥ずかしくて着こなせない気がする

なんていうの?可愛らしすぎるというか、清楚な女学生の定番のイメージだから、着ているだけでスバラシイ!という風に見られるのが気恥ずかしい。
ちなみに友達に言ったらわかるようなわからないような、と言われた



入学して早三ヶ月
目と鼻の先に迫った夏休みに今からわくわくだ。
友達もそこそこできたし、夏休みの予定はひとつふたつ出来ている。
しかし最近よく耳にするのがバスケ部の話題だ

なんでもこの学校はバスケ部がとても強いらしく、夏が近づいてからはインターハイがどうのこうのという話を一日に三回は聞いてる

ーバスケ部って言ったら桃井さんとあおみねくん?て人がいるはずだよね

そこまで考えて足を止める。
あれ。私、桃井さんのこと知ってたっけ?あとあおみねくんて人のことも…
なんか、誰かの話にあおみねくんがいて、その人があまりにさみしそうに、大切そうに話すから覚えてて…

でも私と話してた人も誰だろう?
そこに私がいて楽しい気持ちなのはわかるのに

虫喰いみたいに記憶が断片的だ。
中三の春辺りなんてほとんど覚えていなくて、病気なのかと心配になる


買った覚えのない、ヘンテコな本もあるしなぁ…
いつの間にかカバンに入れられていたソレには、表紙に赤黒いバツ印が描かれてる

ジャンルも特に興味のないものだし、気味が悪いと母に見せたが、どうやら私にしかそのバツ印は見えないらしい。
しかも母が本を開こうとしてもできなかった。余計こわい

でも何故か手放せなくて、すごくすごく大切なモノのような気がして。
肌身離さず持ち歩くようにしてる

ー頭の中で、知らないはずなのに懐かしい甘い声が、なくしてはいけないよと囀るからー



始まる




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