ミルクティの午後に
アカデミアの閻凰に与えられた一室。
青い薔薇が一輪挿しに飾られていて、黒を基調とした最低限の家具があるのみ。
アカデミアでの閻凰の役割は、プロフェッサーの補佐。
恋人の瑠歌が科学者であれば彼はさしずめ愛犬といったところだろうか。
決して裏切ることは出来ない愛犬の彼は瑠歌を愛していた。
三つ子の一番上の姉を人質に取られていて、泣くことも逆らうことも出来ない彼にとって瑠歌は救いだった。
「瑠歌」
「閻凰…」
「研究ばかりで君も大変だね」
「そうでもないわ。儀式次元でも似たようなものだったし…」
「そう。ミルクティでも飲む?」
「えぇ、いただくわ」
閻凰は慣れた手つきでミルクティを入れて瑠歌に渡す。
柔らかな香りが鼻腔を満たした。
「どうして貴方の入れるミルクティはこんなにすてきな香りがするの?」
「内緒、ボクのオリジナルじゃないんだ」
「どういうこと?」
「桃鳳のオリジナルなんだよ」
「桃鳳の…」
閻凰は微笑んで瑠歌に口づけをする。
彼はミルクティを好まない。
愛鳳が好んでいたストレートティを好む。
華やかな薔薇の香りのするストレートティは閻凰のお気に入りだ。
「その方法、是非知りたいわ」
「知りたいなら、桃鳳に気に入られなくちゃね。桃鳳は手強いよ、彼女も科学者だから」
「貴方の恋人に慣れたのだから何でも出来る気がするわ」
Fin...
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