最後に見たのは


 

「待て!そこまでだ」


プロフェッサーの前に連れてこられた菖蒲と瑠歌。
プロフェッサーに楯突いた罪で二人はオベリスク・フォースに囲まれていた。


「最後に願いくらい聞いてやろう。菖蒲」

「……本当ですか、プロフェッサー」

「あぁ」

「じゃあ…」

「私の命と引き替えに、姫葵を解放してちょうだい」

「瑠歌!!」

「私は自分の命なんか惜しくない。それを菖蒲のために使えるのよ?怖くなんかないわ」


瑠歌の赤い瞳は強い意志を秘めていた。
菖蒲のベビーピンクの瞳が憂いを帯びる。


「ボクの願いは一つだけだ、プロフェッサー」

「何だ」

「瑠歌と一緒に死なせてほしい」


そう言うと二人は隠し持っていた銃をお互いに差し向けた。
引き金に指をかけて、微笑みあう。


「もし、こんな運命じゃなかったらボク達は幸せになれたのかな」

「今幸せよ、私は。菖蒲と死ねるんだもの」

「瑠歌、愛してるよ」

「私もよ、菖蒲。愛しているわ」


ぱん。
銃声が同時に鳴り響く。
やがて、菖蒲が先に倒れた。


「ふふ、菖蒲。私だけの、あ、やめ…あいして…」


瑠歌が最後の言葉を言うことなく事切れた。
オベリスク・フォース、プロフェッサーはそれを見て、絶句した。
愛はここまで尊いものなのか、と。
最後に見たものは、美しくも悲しい愛だった。


 
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