「………、う、…」

覚えているのは確か、

「わ、たし…確、か…零君を庇って、撃たれ……」

監視していたある過激派思考の宗教団体が、海外に拠点を置く犯罪組織と日本で接触するとの情報を掴み、宗教団体の動きを監視を強化していた。
宗教団体の監視を強化してから一週間、確かに幹部クラスの動きが激しく何よりも滅多に姿を現さない教祖の姿があったことから、その情報が真実であることが分かった。

そして教祖と高位の幹部達が揃った日、彼らが犯罪組織と接触した。接触してしまった以上そのままにしておくのは危険だからと、上の特例で許可も下りた為、そのまま私たちが彼らを拘束することになった。
彼らの密会場所が人気のない地区の倉庫だった為、そのまま突入したのはよかったが不味かったのは彼らが拳銃を所持していた事。銃撃戦が始まってしまった。

激しさが増す銃撃戦の中でーーー、

「…私の腕を掠めた、から零君が気を取られちゃって…だから」

一瞬の隙が出来てしまった彼に、複数の銃が狙いを定めてしまったのだ。だから思わず、体が動いてしまった。

「ーーー名前!!」

気付いた時には零君の腕の中にいて。胸が灼ける様に熱くて。遠くの方で風見さん達が何かを叫んでいて。目の前の、零君の顔は今にも泣き出しそうに歪んでいた。

「名前、しっかりしろ名前!」
「……れ、い…」
「無理に喋るな!くそ……救急車はまだ来ないのかっ!」


自分の事は自分が一番よく分かる。視界が霞んでいく。意識も遠くなっていく。あぁ、自分は死んでしまうんだ、ってあの時思った。

「零、くん…」
「もうすぐだ…もうすぐ救急車が来るから、だからもう、」
「零君…約束、守れなくて…ごめん、ね?」
「っ、」


それが最後。薄れゆく意識がプツリとそこで途絶えて、

「………私…死んだんじゃ、ないの…?」

追憶の中で


title.秋桜

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