「ここ、病院じゃないよね…?」
天井を見つめたままだった視線を動かして辺りを見回す。そこは白を基準とした簡易的な病院の一室とは明らかに異なる、ベッドのみが置かれた暖かな木目調のシンプルなここはおそらく寝室だろう。ちゃんと自分の状況を確認したくて起き上がろうと、上半身に力を入れようとした。
「っあ、」
体に激痛が走る。息が詰まる。多分あの時撃たれた時の痛みだろう。つまり、
「私、生きてたんだ…」
思わずホッとした。よかった。私ちゃんと生きている。彼と、零君とずっと一緒にいると誓った約束を破らずにすんだ。だけど、何故私が居るのは病院ではないのだろう。彼は救急車を呼んでいた筈。死んでいないのなら私が目覚めるのは病院のベッドの上。こんな、知らない誰かの寝室ではない筈。これが夢でも幻でもないなら、ここは何処?
「とりあえず、ちゃんと状況を確認しなきゃ」
起き上がるのは、正直かなり辛い。だけど我慢しなきゃ。自分の今の状況を確認して、一番は零君と連絡を取れればいいのだが無理なら公安の誰でもいい。とにかく誰かと連絡を取らなければ。
痛みを我慢しながら、ゆっくりと上半身を起こす。そして起こし終えたその時、音を立てながら寝室と扉が開き中へと誰かが入っていた。その音に気付き、勢いよく視線を寝室の入口へと向ける。
宗教団体や犯罪組織の人間だったらどうしようと嫌な汗が流れたが、その人の顔を見た瞬間に安堵した。
「おや?目を覚ましたですね」
寝室の中に入ってきたのは、よく見知った人ーーー零君だった。
いつか明ける夜に祈る
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