「やっ、やっぱり駄目…」
「どうして?」
「どうしてって…、」

キスを繰り返しながら、いつの間にか寝室へと移動していた。
ベッドの上へと押し倒されて段々と深くなっていくキスを繰り返される。
唇に、頬に。首筋に、胸元に。どこか艶めいているようなキスにゾクゾクと、体が震える。

「やはり…」
「?」
「やはり、ライの方がいいですか…?」
「、」

言葉が出なかった。何て返したらいいか分からない。
透に惹かれ始めてるのは本当。だけど、ライを好きな気持ちだって簡単には消せなかった。

「名前」
「……透」
「僕は、本当に君が好きで…だから、最初は君がライと一緒にいて幸せならそれでよかったんです」

ゆっくりとした動作で透の顔が離れて行って、そのまま起き上がる。向けられた背中に急に寂しくなって。
勢いよく私も起き上がると、その背中にぶつかる様に抱き着いた。

「でも、名前はいつもライの後ろ姿を…彼女と一緒にいるライを切なそうな顔で見つめていた」

両腕を前に回してギュッと強く透に抱き着けば、そっと透の手が私の手に重なる。

「僕なら、名前にそんな顔をさせたりなんてしません。君以外の誰かに、嘘でも愛を囁いたりなんてしない」
「……うん」
「名前」
「……うん?」
「あなたが、好きです」

抱き着いてた腕を優しく解かれて、透がこっちを振り返った。少しだけ、泣きそうに顔を歪ませたまま頬を優しく撫でられる。
その感触があまりにも優しくて心地よくて、思わずその手に擦り寄る。私のその行動に透の表情が和らいで、また唇にキスが降ってきた。

「ん…」

目を閉じて、キスを受け入れて。彼の首元に腕を回してギュッと強く抱き着くと優しく押し倒された。
キスの合間に何度も何度も。好きだ、と愛を囁かれる。

頭の中にライの姿がチラつく。だけど、

「好きだ、名前…本当に君が…」

こんなにも甘くて、切なくて。泣いてしまいそうになるくらいに苦しくて。
今までに一度だって、これから先にだって。
こんなにも誰かに愛を囁かれることがあるのかな?
こんなに、愛されてるって感じることがあるのかな?

「名前、名前…」

唇だけに降ってきていたキスが少しずつ色んな所に降ってくる。また艶めいてくる雰囲気にドキドキ、する。だけどもう、さっきみたいにそれを拒んだりしない。

「透」

名前を呼んで、首筋に埋めていた顔を僅かに上げてこっちを見る透に、にっこりと微笑んだ。

「名前?」

心の中からライの存在も、彼を好きだと思う気持ちも全部消えたわけじゃない。

だけど、目の前のこの人が、堪らなく愛しい。

「透、好きよ」

隠さずに、真っ直ぐに伝えてくれるこの人の愛に答えたい。

「好き」


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