「ねぇ」
「デザートは何にしますか?コードネームはティラミスが好きでしたよね?」
「ねぇ!」
「あ、でもここはジェラートが一番のオススメらしいですよ?」
「ねぇってばっ!!」
「そうだ、コードネームがティラミス、僕がジェラートにして半分こにしますか?」
「だからっ!人の話を聞きなさいよ!バーボン!!」

バンッと、勢いよくテーブルを両手で叩きながら立ち上がればバーボンの喋りが止まる。全然人の話を聞かないバーボンに怒りで興奮してしまい、肩を大きく上下させながら息をする。
目の前にいたバーボンはきょとん、とした顔をしていたがすぐにフッと笑うと手を伸ばして私の手に触れてきた。

「っ、」

にこやかな笑みは崩さずに笑ったまま。視線は私から逸らさずに、見つめたまま。手の甲を撫でた後するりと手を握られる。指と指が絡められて、解こうとするが絡め取られたバーボンの手の力が強くて、解けなかった。

「怒った顔も可愛いですが、いくら個室とはいえ僕達二人きりではないのでもう少し静かにしましょう?」
「誰の所為でっ!!」
「コードネーム」

甘ったるい声で呼ばれて、また手を撫でられる。確かにこれ以上大声を出して騒ぐのは大人としてどうかと思う。バーボンに指摘されて大人しくなるのは気に食わないけど。一回、大きく息を吐いた後腰を下ろした。

「………手、離して」
「嫌です」

握られたままの両手をバーボンの口元まで引き寄せられて、手に口付けられる。
びっくりして思わず体を震わせると、バーボンは楽しそうに声を出しながら笑ってもう一度口付けを手に落とした。

「コードネーム、キスしたい」
「………そういうことは、貴方を好きな女にいいなさいよ」
「つれないなぁ」
「うるさい。それよりさっさと今度のターゲットの情報寄越して。私は貴方とプライベートで会ってるわけじゃないんだから、さっさと仕事して」

バッと勢いよく手を振れば、今度は簡単にバーボンの手が離れる。バーボンから顔を背ければ、クスクスと笑われてムッとする。

「仕方ありませんね。はい、どうぞ」

スッと、今回の仕事の詳細が入っているであろうUSBメモリを差し出される。受け取ろうと手を伸ばしたが、届くよりも早くバーボンはそれを私の手が届かない頭上へと移動させてしまった。

「………ちょっと?」
「キスしたい」
「……だから、貴方を好きな女とでもしてって言ったわよね?」
「僕はあなたとキスしたいんです」
「私はしたくない」
「欲しくないんですか?これ」

そう言って、ブラブラと目の前でUSBメモリをちらつかせられる。隙を狙って奪おうとするが、ムカつくことにバーボンに隙は出来ない。

「………ライに、喧嘩売りたいなら私よりも、適任がいるんじゃない?」
「ライ?あぁ、もしかしてこの前の言葉気にしてますか?」
「………」
「彼奴は関係ありませんよ。たまたま彼奴があなたの好きな男なだけで、相手が彼奴じゃなくても僕のあなたに対する態度は何もかわりませんよ?」

バーボンの、USBメモリを持っていない方の手が頬に伸びてきて頬を撫でられる。そのまま、親指が唇へと降りてきて、そっと唇をなぞられた。

ぞくり、と心臓が震える。

「ねぇ、コードネーム。あなたにキスがしたい」
「………私、」
「コードネーム、僕にはあなただけですよ?」
「、」
「だから、

あんな退屈な奴やめて僕にしませんか


title.確かに恋だった

prev | top | next

ALICE+