- 安心しろ 来ない春はない -
5月1日、ついに来てしまった席替えの日。これで緑間くんと離れてしまうのはほぼ決まったようなものだ。最近は不幸続きだし、運が良くても2個後ろとかかなあ……。
「全員くじ引いたかー」
先生が黒板に数字を書き込んでいく。これはもしかするとコンクール以上の緊張かもしれないぞ。……今のは言い過ぎたかも。
「緑間くんは何番だった?」
「俺は6番だ」
私は24番。あ、6の倍数だしチャンスある、ないよね。
「うわ! 1番前かよ!」
「横一緒だね!」
「よっしゃ後ろー!!」
席がどんどん決まっていくけど緑間くんの横はまだ空いている。24番、24番、先生24番かいてー。
「ヤバい、薫すげー顔!」
「えっ」
待って、緑間くんこっち見てないよね!? 絶対変な顔してたよ、辛い。というかなんでここに高尾くんが。
「まあ元気だせって!」
「まだ決まったわけじゃないですー!」
そう、まだ望みはあるんだーー
「あ」
「嘘だろ!?」
黒板から目が離せない。いや、え、だって、ほら、24番、となり、6番の。夢とかじゃないよね、違うよね。
「高尾くんちょっとつねって」
「任せろ」
「お前達はさっきから何をしているのだよ」
痛い痛い痛い、手加減なしは痛いよ。
「夢じゃない……信じらんない…」
「これが執念か! マジですげーわ薫!」
それは語弊が生まれます高尾くん。爆笑してないで早く自分の席に戻りなさい。
「席移動しろよー」
そうだよ、運が悪いはずなんてなかったんだ。なんてったって今日の私はおは朝1位の女だもん。ラッキーアイテムのブタの貯金箱もカバンの中にひっそり入れてきたし、私に抜け目なんてなかったんだ。
「五月もよろしくね緑間くん!」
「ああ、よろしく頼む」
「ふふふ」
嬉しすぎて死ぬんじゃないかってくらい嬉しい。これは五月も平穏に過ごせそうな予感。
◇◆◇◆◇◆
「真ちゃんかえろーぜー!!」
部活がやっと終わり一緒に帰るために真ちゃんを呼びに行く。にしても今日の練習はヤバかった、本気で吐くかと思ったわ。
「ほい、真ちゃんお汁粉。俺は何にすっかなー。コーラ……ファンタも捨てがたい!!」
「毎日毎日忙しい奴だな」
「真ちゃんは毎日お汁粉だもんなー!!」
よく飽きねーなと思う。俺だったら3日、は無理だし、てか1日で無理だな。
「おい高尾揃っているぞ」
「え!? 嘘だろ! ちょーツいてんじゃん!!」
コーラとファンタ両方飲めるとかマジでキてるぞ。
「薫の運が俺にまで来たか…」
「何故そこで御子柴がでてくるのだよ」
「なんでもねーよー」
「薫が真ちゃんのこと好きなんだぜ!」なんて言った日には何が起きるか分からねえ。薫に刺されるかもしれない。
「あ、そーいや、連続で横とか真ちゃんと薫運命なんじゃね!」
「馬鹿なのかお前は」
「ひっでーー!!」
こんな奴のどこにときめく要素があるのか疑問だ。変人がタイプとか?
「それはないわ……ねーよな?」
「知らん。お前はさっきからなんなのだよ」
「真ちゃんはないわーって……」
「なんだと!」
まあ変な奴ではあるが嫌な奴ではないしな。上手くいくように応援するくらいなら薫も怒らないだろ。
「死ぬまでには真ちゃんにもいい人みつかるって!」
「うるさいのだよ!」