ごみ女の夜中の掃除(リヴァイ)

訳あり男装設定です


もう既に日は落ち、夜は暗闇に被い尽くされていた。調査兵団の平兵である俺はやっとこさ業務に開放され、満身創痍で自室に戻りそこに構えるベッドに倒れ込もうとしたが、床が見えないほどのゴミに躓きベッドではなく床にあるゴミの山に倒れ込んだ。俺は元々掃除というものがどうにか出来ない。なんせ自室にはもはや最近の忙しさ故に寝に来ているようなものとなっていた。休暇にはいつも夕方まで寝続けた挙句に城下町に出て酒に溺れるのが今の俺の生活と化していた。そんな生活ではゴミ(酒の空瓶や食べかす)が増える一方であり異臭もするような気もするが、人の順応能力とは素晴らしいようで俺にはもう何も匂いはいない。風呂には明日の朝に入ろう。嗚呼きっとまた明日寝坊して怒られるような気がするがまずはこの疲れ切った身体を休めなくては全ては始まらないだろう。とりあえずベッドまで這い上がろうとしたが、俺の身体は既に睡眠体制のようで思うように動かない。今日もこのまま寝てしまおうかと頭を過る。というのもかれこれ三日ほど今日と同じようにゴミにうもれて寝てしまってしたからだ。本当に凄いよ人間の順応能力って、と一あくびをして重りでも付けたように重い瞼が重力に負けて完全に落ちようとした時だった。ドスっと自分の腹辺りに大きな衝撃が走り飛ばされ壁にぶち当たる。酷く痛みのある腹をさすりながら辺りを見ると、これまた酷く眉間に皺を寄せた兵士長が汚いものでもみるような目で俺を見下げていた。俺は直感した。今日はいや、今晩はきっと命日なのだろう。


「おい、なんだこのゴミの山は」

「気づいたらこわなことになってたんですよ」

「先週にも同じこと言ってたじゃねーか!あぁ?」

「えー前回よりはましに「変わんねーんだよ!直ちに片付けろ!!」

「今日は疲れたので明日します」

「削がれてぇのかテメェ」

この部屋の掃除はほぼ定期的にこのリヴァイ兵士長の到来により強制的に行われる。リヴァイ兵士長と私の部屋とはどういう運命か隣同士でありよくこういうクレームがこちらに来る。そしてこういう時は大抵は兵士長の部屋に汚い部屋には必ずと言っていいほどいる兵士長最大の敵が出たときだ。

「わかりましたよ。兵士長の部屋にまたゴキブ「言うな削ぐぞ!」
兵士長は言葉にするのも嫌な通称Gが部屋に出た時は必ず俺の部屋に来る。人類最強の男がGの一つも殺せないとなれば笑い者だ。・・・とは流石には言えないが俺はあまりこんな部屋に住んでいることもありGの耐久性はついている。そのためその討伐を夜な夜なさせられている。まぁ俺の部屋が汚すぎることもあるのだろう。そして今日もGの討伐をして部屋に帰ったら兵士長はこの部屋の掃除をしているのだろう、彼は類まれに見る潔癖症だ。そしてグチグチ言われながら部屋の掃除をさせられて夜を明かすのだろう。兵士長がこの部屋に来た時の日課だ。そして俺はまた数日もしない内に部屋を汚していくのだろう。



「お前今度また出たときは蹴りだけで済むと思うなよ」

「もし俺が死んだら兵士長の部屋に出だ奴らを誰が討伐するんですか?」
兵士長の討伐の任務を遂行し部屋の掃除をさせられている時の何気ない会話。きっと表情は読み取れないがきっととてつもなく威厳な顔をしていることだろう。見ない方が身のためだとあえて兵士長に背を向けて床に散らばるゴミを回収する手を早めた。兵士長と俺とは同期にあたる間柄だ。憲兵団に所属していたが人不足もあり調査兵団に移動となった。その頃は俺はまだ女として女子力高めで頑張っていたが今やもう女を捨てて兵としてこの身を捧げている。


「お前が死ぬことなんか考えられんな」

「そりゃあ今まで図太く生きてきたからな」

「…なまえ」
急に女であった時の愛称を呼ばれ胸が高鳴った。いつもはお前とかおいとかて呼ぶ癖にたまにこのように優しく声を部屋に響かせる。リヴァイは俺に女であって欲しいと思っている。リヴァイは本当に馬鹿な野郎だ。昔のことを引き摺りまた過去に捕らわれている。そんなこと俺も私も望んではいなあというのに。リヴァイには前を向いて人類を導いて欲しいのだ。そしてその後ろに俺がいて、もし俺が倒れてもまっすぐ前を向いていて欲しいのだ。支えるものが多い彼の枷にはなりたくない。だから俺はリヴァイの呟きを聞かなかった振りをし睡眠時間を増やすため掃除に明け暮れた。リヴァイはいうものように部屋が自分の満足のいくまで掃除し続けていた。

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