高杉晋助の許嫁は待っている(高杉)

「ねぇどこにいくのよっ、」

「てめぇには関係ねぇよ」

「何よそれ、反抗期なの?私あんたのかーちゃんじゃねーよ」

「誰がそう言ったかよっ!というかお前、俺と一緒にいたらなんか言われるぞ」

「は?」

「は?ってお前なぁ。許嫁だからわかるだろ?俺が何言われてるのか」

「あぁ、親の七光りとか、チビとか、調子乗ってるとか、中二病とか、面汚しとか?あと屑やうんこやぼろ雑巾とか」

「やめろ!メンタルどれだけ抉ってくるんだよお前!あと最後の方お前がそう思ってるだけだろ!!」

「あ、ばれた?」

「っもういい!」

「待ってよ信之助」

「…誰だよそれ」

「あ、それは最近言い寄ってくる男の名前だったわ。ごめんごめん晋作?」

「わざとか?わざとなのか?」

「チョー真剣よ」

「…お前な、これ以上俺につきまとってるとろくなことねぇぞ」

「それは知ってるわ。というかすでにものを取られたり、机を落書きされたりされたもの」

「おまっ、いつからだよ!」

「貴方が変な輩に喧嘩したからって言ってたわ。」

「大丈夫なのか?怪我とか…」

「ええ、力では勝てないからまず女と大人を味方につけて、あることないこと噂を広めて悲劇のヒロインとして泣きついたらいつの間にか制裁されたわ。今や肩身の狭い思いをしてるでしょうね。」

「…」

「何その顔」

「いいや、なんでもねぇよ!」

「心配してくれたの?でも私貴方に守られなくても大丈夫よ、ヘタレ」

「ヘタレじゃねぇ!!」

「だから、また寺子屋に…」

「もういいっ、俺はもう行くからな!!お前ももう俺に付きまとうなよ!!」

「あ、ちょっと」










「ここね」

「誰だアンタ」

「貴方、ここの門下生?訪ねたいことがあるんだけど」

「あ?俺今から昼寝で忙しいんだけど」

「は?だからこんな天パなのね。この人。このままずっと女にもてず素人童貞を貫いていって魔法が使えるようになるのね。いいわね」

「どこがだよ!俺だって本気出すときはストレートになるから!!てかなんなんだよお前」

「だから訪ねたいことがあるって言ってるのだけども」

「それが人にものを頼む態度か?」

「さっきからめんどくさい人ね。何?私の体が望みなの?」

「誰がてめぇみたいなガキの体求めるかよ!俺はもっとピチピチの女がいいんだよ!」

「ふふ、そうやって選んでる余裕あるのかしら?」

「うるせぇ!」

「ん?なまえではないか!どうしたこんなところで」

「桂!久しぶりね。」

「何?知り合いなの?!」

「えぇ、元同門下生。」

「ふーん。じゃあコイツもあの高杉とかいうすかしたうんこ野郎と同じかよ」

「おい、銀時。やめろ…」

「銀時と言ったかしら、貴方ね。アイツを傷だらけにしてたの」

「そうだけど?でも」

「(ヤバイ、なまえがキれてる)」

「ちょっと私とも勝負しなさいよ」

「なんだよ!俺女とやり合う気なんてねぇよ」

「あら負けるのが怖いの?ふふ」

「上等じゃぁあ!!」










「銀時、屑ね。女は力がないのよ。だからこの程度のハンデは当たり前じゃない、屑ね本当に」

「女の子が屑なんて使っちゃ駄目ですぅ!てかまだ俺のアームストロング砲が号泣してるんですけど?!」

「大丈夫よ。排尿でしか使わないでしょ?支障は僅かだわ」

「てめぇ!それはわからねぇだろ!!」

「(笑)」

「何?!何が言いたいの?!!ほんとなんなの?この女!!」

「銀時、コイツは昔から気に入らない奴のことを陥れることに長けた奴だ。気をつけろよ」

「あら心外ねヅラ。気づいたらそうなるのよ」

「忠告おせぇよヅラ!俺の俺がまだ泣いてるよ?!可愛そうだよ?!!」

「桂だっ。いいか?俺はヅラじゃない。確かに下の毛はヅラが必要かもしれぬがいつかは立派な」

「そんなことどうでもいいわ!!ちなみに俺はもう生えてるもんね!ジャングルジムだから」

「ジャングルジムなら振り回してやろうかしら?」

「すみませんでしたぁあ!!!」

「てか、お前何してんの」

「あ、晋太郎」

「晋助だって!」

「あーそうそう。貴方が通いつめる寺子屋に来てみたの。そしたらそこの天然パーマがガンつけてきたから勝負したの、股間を蹴ったら勝ったわ」

「はぁ?はぁああ??!!何してくれちゃってるの??!!」
「何知り合い?」

「あぁ、なまえは…」

「許嫁だからね、君の監視しとかなくちゃいけないのよ。大変なのよねー」

「許嫁言うなっ!」

「何何許嫁って?!らんまなの?らんまなの?」

「銀時、らんまにこんなかーちゃんはいない。茜ちゃんはもっとこう、グラマラスな」

「私はどちらかといえばシャンプー派だから」

「似ても似つかねぇ」

「黙れよ、また潰されてぇか 」

「すみません」

「こんなところまで追いかけて来やがって、お前もまた言われるぞ!」

「私よりも自分の心配したらどう?そろそろ勘当されるんじゃない?」

「ぐっ。嫌味言いに来たのかよ」

「別に、晋助といたいだけ」

「っ!!」

「だって虐めがいがあるもの」

「てめぇ!!」

「「やっぱり、茜ちゃんじゃない」」











「あら、また会ったわね」

「げ」

「あぁなまえかどうしたんだ?」

「晋助のお父様からね、最近帰りが遅いと聞き付けたから様子を見に来たの。」

「意外に過保護だよな、アイツの許嫁も親父も」

「いいことじゃないか」

「で、アイツは?」

「え、えーと…」

「今頬を赤らめた女子に連れられて何処かに行ったぞ」

「桂バカか?お前ちゃんとらんま見たことあんのか?茜ちゃんならこんなこといったら嫉妬で…」

「そう。ならここで待ってたらいいのかしら」

「え、あぁ、下駄箱履き替えるからここで大丈夫だ(案外普通?)」

「銀時、何回も言ってるだろ?なまえは茜ちゃんではない(安易な嘘はこちらの身を滅ぼすぞ銀時!…意外に普通なのか)」

「あ、見て」

「「あ」」

「晋助待ってたら貰ったわ。ハートが付いてる可愛い」

「これってラブレターじゃねぇか!!」

「ここでは初めてだわ」

「お前!高杉という男がいながら!」

「塾では結構貰ったのよこれでも」

「はぁああ??!!お前が??!!」

「あんたら早まりすぎよ」

「これでもいつもは」

モブ1「あ!なまえちゃん!ばいばーい!!」

モブ2「また明日喋ろうね!!」

「うん、また明日ね(きらきら)」

「「(これかぁああ!!てか外部の寺子屋支柱に収めてやがる!!!)」」

「ふふふ、どうしよっかなー」

「どうするってお前なぁ、高杉が怒るぞ」

「なんで?」

「なんでって、許嫁だろ?」

「そうだけど、まだ子供なんだから好きに遊ぶべきよ。それにとうの本人は今女の子に呼び出されてるはずでしょ?」

「お前達は、本当に…以前先生の部屋から拝借したエーブイと変わらんな。アブノーマルだぞ」

「全くだ」

「うーわー、先生の趣味、聞きたくなかったわー」

「先生結構アブノーマルだからなぁ」

「ラブレターどーすんだよお前。」

「別に決まってるじゃない。オッケー出すのよ」

「何故だぁああ!?」

「高杉の、とばっちりがっ」

「勿論、許嫁がいるから結婚できないこと、また愛することはできないこと、毎回ダイヤモンドのついた貢物をすること、などなど条件を飲んで貰ってもいいのであればね」

「お前鬼だな。おしっこ漏れそう」

「悪魔だ、悪魔がいるよぅ」

「あと、過去に彼氏は二人いたよ」

「既にあの条件を飲んだ亡者がいるのか!!」

「凄いよねー。でも本性出したらすぐ別れきり出されたけどね。」

「でしょうね!!高杉それ知ってんの?!」

「まぁ、ねぇ」

「絶対いってないよね!!」

「おい、うるせいぞ」

「あ、高杉」

「よぉ、女たらし。女の子どうしたの?」

「あ?振ったよ」

「えー可哀想に。」

「てかお前、それ何」

「げ、たっ高杉」

「それはっ」

「見てわかんない?ラブレター貰ったの。貴方より優しくてカッコいい人だったからねー。おっけーしてもいいかしらね」

「…」

「…」

「何この沈黙?」

「いや、なまえちゃん?当然お断りをしようとしたよね?(そうだと言ってくれぇええ)」

「え?だから言ったじゃん、オッケーするって」

「あぁ?お前っ」

「いいじゃない、」

「言い分けないだろ?!」

「なんで?」

「っ」

「お前、なんか、嫌いだっ!!許嫁ももうどうでもいい俺のまえから消えろ!!」


「っ」

「おい、高杉言い過ぎだぞ」

「おっおいなまえ?!」

「…」











「おや、どうしましたか?」

「っ…先生、実は」




「そうですか、貴女は好きなものに意地悪したくなるんですね。そして、とてもかまってさんだ」

「はい、それに可愛い女の子に告白されてて、歯止めが効かなくなっちゃって。嫌われちゃった。」

「それは少し違いますよ」

「え、」

「彼は怒りはしましたけど貴女のことを嫌いになってはないですよ。」

「でっでも、」

「大丈夫、ですよ。ちゃんと謝罪すれば」

「…はい。」

「時に貴女は将来、何になりたいですか?」

「え、」

「貴女は性格はジャイアンそのものですが、頭は賢く、闘いのセンスもある。女でありながらも選択肢は沢山あります。」

「(ジャイアンって)………わかりません。ただ、」

「ただ?」


「晋助やみんなのこと、この場所を守っていきたいって思います。」

「そうですか、いい夢ですね。さ、もう夜が近い。みんな出てきなさい」

「げ、」

「ぐ」

「っ」

「(ずっこけ三人組…)」

「さ、高杉君なまえさんを送ってやってくださいね」

「(ムスッ)」

「…晋助?」

「帰るぞ」

「う、うん…先生!ありがとうございます!!不倫もの好きなのは黙っておきますねー」

「「げぇっ!!」」

「…君達、ちょっと話があります」












「晋助、」

「ごめん、言い過ぎだ」

「私もごめん。だから仲直りしてくれないかな」

「…いいぜ」

「ほんと?」

「ラブレター、その場で破ったら許してやる」

「…それだけ?もっとなんか金とか体とか女とかないの?」

「お前俺のことなんだと思ってるの?」

「極悪人」

「反省してねぇじゃねえか!!」

「…」

「…」

「…ひっ」

「ごっごめんって!どなって!」

「え、あぁ。今くしゃみ出そうになってた。もう収まったわ」

「お前なぁ、」

「晋助」

「あ?なんだよ」

「…私、貴方に言えなかったことがあるの」

「な、なんだよ急にっ」

「許嫁ね、親が決めたと思ってるでしょ?違うから。私が貴方を選んだの」

「は?そ、それじゃあお前本当は俺の事…」

「あみだくじで」

「くじかよ!」

「え?期待した?どうしたの?え?私が貴方だから選んだとか思ってる??プププ」

「コイツほんっっと腹立つ」

「でも、私が貴方を選んだわ」

「っ」

「この先、貴方が許嫁であることは変わりないわ。不本意だけど」

「不本意なのかよ!」

「でも選んだわ。それに私、貴方のことちゃんと好きよ。」

「…」

「…顔真っ赤よ」

「お前もなっ」










「先生、大丈夫よね」

「あぁ、俺らがきっと助ける」

「憲伸君期待してるわよ」

「もはや原型とどめてねぇ」

「お前、間違っても今回は付いてくるなよ」

「私がいつも貴方をストーカーしてるとでも言いたいの?」

「違うのかよ」

「…そこまで貴方を信用してないわけではないわ」

「ほぅ、珍しく素直だな」

「それに、このやけ野原をどうにかしないとね。貴方達が帰って来たとき困るでしょ?私はここを守るわ」

「そうか」

「立派な、ショットバーを作るわね。」

「まてまてまて、そこは寺子屋じゃねぇのかよ!」

「だって、今流行りよ?それにご飯も美味しいし。貴方達の帰る場所ちゃんと作っとくから。安心して」

「…そうか」

「あ、今貴方が考えてること当てましょうか。『僕家族に勘当されて許嫁も解消されそうっどうしよーマリ様に捨てられちゃうー』ってとこかしら」

「てめぇっ!人がどれだけこの事に」

「あら、当たったの?」

「ぐっ」

「…大丈夫よ、前も言ったでしょ?貴方を選んだのは私よ。ちゃんと責任は取るわ。…だから、だから」

「あぁ、ちゃんと帰ってくるさ。…あと」

「…?」

「…」

「…え、なに?」

「…」

「晋助さーん?」

「…、もし、ちゃんと帰ったらお前に伝えたいことあるから!」

「え?立てちゃった?死亡フラグ立てちゃった??」

「お前なぁ、俺がどれだけ真剣にっ」

「でも、それ言ったところで死亡フラグ変わらないわよね。なら、今言いたいこと言ったら?」

「どれだけムード壊したら気がすむの?!」

「言うの?言わないの?」

「………もし、帰ったら速攻で式上げっから覚悟しておけよ!!糞尼!!!」

「なにそのプロポーズっあははは!」


昔、私にもこのような青春期がありました。その後私は一人育った寺子屋の再建築を試みるも、数分後やはり無理だと悟り、親に土下座して金を貸して貰い、建築依頼を出した。マミーありがとう。その後は順調だった。武家の両親から許嫁が解消されたやらお見合いとかの話があったが全部蹴り、そこでショットバーを経営していった。もともと料理や酒作りは好きだった(親が好きだった)ため店はすぐさま繁盛した。店を経営しながらも私は彼らを待っていた。そして、とある朝テレビにてニュースを見ているとある衝撃が走る。吉田松陽死亡。彼らは失敗したのだ。そして戦争は日本の敗北となり終結した。私は彼らを待ち続けた。きっと帰ってくると信じていたから。そして、銀時、小太郎と面子は個々に帰ってきた。そして銀時は旅に、小太郎は攘夷に身を染めると報告を受けた。二人とも私の料理はさぞ旨かったのだろう唇を真っ赤にし、口から火を吹きながら泣いていた。彼らはこれくらいしないと泣かないためよかったと思う。あと一人は帰ってこなかった。銀時や小太郎にはあえて彼のことは聞かなかった。帰ってくる、その言葉を信じていたから。そんなこんなで更に月日が過ぎたが私は更に待ち続けていた。
とある夜、客足が止まり今日はもう閉めようと思った時だ。入り口から匂う煙管の匂いにふと顔を見上げた。


「しん、す、け」
何も声を放つこともなくすぐに倒れこむ彼を抱えた。体の所々に刀で切られた後があり、どうやら外がうるさい。咄嗟に彼が逃げて来たのだと悟り私は彼を隠れ扉に放り投げ扉を閉め隠す。血痕を身体につけ路上に出て悲鳴を挙げた。

「どうしましたっ?!」

「っあの、血塗れの男の人がっ、急に」

「どちらに行きましたか?」

「車に乗って、南の方にっ」

「そうですか!ありがとうございます!!お怪我は」

「ありません。びっくりしましたよ、仕事があるのでこれで」

「あ、はい。お気をつけて」
私を助けた警察は私の嘘の発言に真に受けて南の方に消えていった。これで少し落ち着いていけるかと、安堵のため息をつき店を閉め
隠れ部屋にいる彼の手当てをしていく。左目は包帯で隠され、その他古い傷や新しい傷沢山ありよく生きていたなと思う。そして僅かな喜びと懐かしさを噛み締めていた。
それから数日店を閉めて目を覚まさない彼の看病をし続けた。追われる身ゆえに医者には連れていけなかったようで疲労がだいぶ溜まっていた様子。熱発もあり苦労を要したが、数年の月日のことを考えたら安いものだった。


「ん、」

「あ、やっと起きた?」

「ここは」

「え、私の経営するショットバーの隠し部屋。」

「そうか。なまえ…」

「何」

「すまねぇ、俺は、俺はっ」

「…」
残された右目のみでこれは堪えながらも涙を流し、私に謝罪した。その謝罪の意味を私は悟り、彼の硬い髪を撫でた。途端晋助に私は手首を引っ張られそのまま押し倒される。私はここで彼に犯されるのだと思ったら笑いが込み上げた。


「おかえりなさい」
私の言葉を合図に私は彼に身を委ねた。そのときからきっとわかっていた。彼もまた彼らと同じく私のもとから去っていくのだと。そしてこれこそが彼の謝罪の意味でもあった。いつか彼と安楽な余生を共にしていくのだろうと思っていた。きっと彼もだろう。だが現実はどうしようもなく歪んでしまった。そのいつか夢見ていた未来はもうないのだ。彼は私よりも復讐を選んだ、ただそれだけのこと。だけども今だけは、ほんの少しでも長く彼がここに生きていて、彼を繋ぎ止めてはくれないものかと私は彼の胸で祈り泣いた。


散々に私のこと抱いた後、彼から先生の死についての真相を打ち明けられた。そして今後、自分はやはりまた攘夷に身を染め先生の敵を打つのだと彼は語った。あの後彼は数日私の家に滞在し体の傷を癒した。だが私には彼の本当の傷を癒すことはできなかった。彼はもう復讐で蝕まれており、彼の瞳には私は写し出さなかった。それでも、私の心は昔から変わらなかった。こんなグズを忘れて女としての幸せを掴む勇気があったのならこんなにも苦しむことはないのだろう、それでも私はやはり先生やこの葛のことをほっておくことができなかった。


「なまえ」

「何?」

「俺はもうここを出る」
私との最後の時間とでもいうような思い詰めた面持ちで私を見据えた。こんなときにだけ私を見ないで欲しい。

「そう」

「止めねぇのか」

「止めてほしい?止めてもいくでしょうに 」

「…そうだな。今まで、ありがとな」

「…」

「許嫁は解消だ。だからお前は…」

「グズ!」

「?!おっおい」

「なんで、最後の別れみたいなこと言うのよ!死亡フラグ立てないでよ!!ちび助!」

「ちびじゃねぇし」

「煩い根性なし!!」

「おい」
この男は私を置いて修羅の道へ向かうだろうことは長年の付き合いでわかっていた。いいや、私を置いてきぼりにするのは昔から。だからこんな時が来るのことは察していた。だがコイツは全く私という女というものを理解していない。

「私を嘗めないで欲しいわ。国を敵に回すから?表だって結婚できないなら?私が弱いから?そんなことで私が納得すると思っていたの?」
私はグズの胸ぐらを掴み更に続けた

「私の…愛した男はそんな器の小さい男じゃないわ。好きな女くらい無理やり連れていくくらいしなさいよ!」

「お前ほんとかわいくねぇ女だな。」

「なら、これは何かしら」

「おまっ!それは俺がなくした…あ」
私が胸元から取り出したのは変にギラギラしたダサい指輪。それをみた男は目を見開き動揺を見せる。これは傷の手当てをしている最中に胸元から盗んだものだ。丁寧にも指輪の裏側には奴と私の名前が刻まれていることも知っている。

「元々私にやるものでしょ?大分前からプロポーズ用にと思ってたけどなんだかんだ渡せなかったんじゃない?」

「なんでそれを」

「銀時に聞いたわよ。大分前に」

「アイツっ」
今度潰すっと嘆いている傍らで指輪を眺める。やはりダサい。すっとアイツの手が私の肩に乗せられる。

「言わねぇで行くつもりだったが、俺は、昔からお前のこと好きだ」

「知ってるわよ」

「ぐっ、だが俺はやらなきゃおさまらねぇものがある。」

「それも知ってるわ」

「俺は、それを壊す。だからお前は」

「…本当に身勝手な人。自分じゃ幸せにできない?私の身に危険が及ぶ?ふざけないでよ。私は貴方を選んだときからそんなの覚悟してんのよ。馬鹿じゃないの、私を捨てるなら足手まといくらい言いなさいよ」

「…」

「でも、そんな貴方を好きな私はもっと馬鹿ね。ほんと」

「…お前、俺のこと本当に好きだったんだな」

「心外ね、これでも恋する乙女よ」

「ムードクラッシャーなくせして」

「だって壊して欲しそうな顔してるもの貴方。」

「ドMか俺は。」

「…そうね、少なくとも私は待つことが嫌いだから、浮気するかもしれないわ。縁談も来ているしね」

「うぐっ」

「それにこの指輪も何?普通ダイヤモンドとかてしょ?何よジルコニアって」

「すまねぇな!金がなくて!!」

「でも、嬉しい。とっても」

「っ、…なぁ、一緒に俺と来ねぇか。待つことが嫌なら」

側にいたい、きっと昔なら即答できただろう。しかし今の私では付いていっても邪魔でしかない。女とは


「…」

「…」

「…嫌よ」

「お前がいったんだぞ、そうしろって」

「そうね、でも」

先生と、約束したもの。

「私はここでここを守るって約束してるから。貴方達が帰る場所を。だから、」

「…ほんと、素直じゃねぇなお前」

「それがいいんでしょ」

最後に高杉という男は昔のような笑み浮かべながら別れた。そして、また誓うのだ。この場所を守り抜く。それが私のやること。そして意地だ。彼らが帰って来たとき私は遅いと殴ってからおかえりなさい、と招き入れる。彼らの関係が変わったとしてもだ。先生が私達にやったように。私は先生の場所を、皆の場所を守り抜き、先生の変わりにあいつらを叩きのめします。

だから安らかに、私はまた一人で泣いた。

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