高杉晋助の許嫁は待つことをやめた

※高杉晋介の許嫁は待っているの続きです









私は貴方たちの育った場所、変える場所を守ること。そしてそれが女である私の役目であり出来ること。そして貴方たちが旅立った後も私は店を開きながら貴方たちのことを待ち続けた。ニュースやネットでテロのことを聞くたびに連絡も寄越さない貴方達の生死が確認し安堵したが、実際は元気故に文さえも寄越さなかったことに非常に腹が立ってたので今度会ったらマラクラッシャーをお見舞いすることを誓った。さて、前置きはさておき、ショットバーを経営している私はなんせ身分がよく見合い話がよく舞い込んでいたが当時の私は結婚はする気はなく拒否していた。そんなある日、よく物を落とすようになった。最初は疲れてるのだろうと思っていたが、それは日に日に増していき、流石におかしいと思い、病院に何気なく検査をしたところ、私は今の日本では治らない病気を患っていた。それはまさに日に日に筋力が衰えていき、最後には心筋の動きが止まり死に至るとのことで、同時に数年の余命を言い渡された。しかしこの病は日本ではどうにもならないが天人の最先端の医療技術ではどうにかなるらしいが私ではとても払える金額ではなかった。それを聞いた両親は多額の医療費を出す代わりに、あの土地を売ることと縁談を受け普通の女として結婚し、子供を宿せと条件を出してきた。
勿論、私は拒否した。自分の命よりも私にとってはそこが大切なものだった、それを両親は許せず、私を拘束し無理矢理にも治療させようとした。そのため、私は自らそこの土地権の書類を持って江戸へ逃げました。
江戸に来たのは貴方達に会えると思っていたから。両親からにげながら仕事を転々としてる最中に万事屋になった銀時、テロリストの小太郎に再会する事が出来たため1人ずつ股間を蹴るあげてやった。とある祭りで、許嫁だった晋助とも再会し同じように股間を蹴った。久々に会った晋助に私は抱き着きたい衝動を必死に抑えた。晋助は私が寂しかったから江戸に来ていると勘違いしてるのか一緒に来ないかと誘ってきたので再び股間を蹴って逃げた。正直なところ誘ってきたことに喜びを隠しきれず、はいと言いそうになった。しかしこんな後先ない女が足手まといにならないはずなかった。その後も江戸を拠点に私は住み周りの人達とも仲良くなったが、2人には私の病気の事は言わなかった。私に気を使う事なんてして欲しくなかったから。勿論、晋助にも言っていない。そんな中でも病気は進行していき、とうとう私は動けなくなり倒れ、入院を余儀なくされた。そういう時に妙に察しがいい銀時に追求され病気の事を打ち明けた。そして私の遺産である土地の権利書と許嫁から貰った指輪を渡した。土地は彼にとって一番大事な場所だからと元々彼に渡すつもりだった。指輪は返して欲しいと伝えた。どうしても直接渡せなかったから。銀時は大層立腹していたが最後のお願いと言ったらそれらを持って病室から出て行った。それから、私の病気の事が小太郎や周りの人達に伝わり、見舞いが尽きなかった。その頃には両親からあきらめられたのか追っ手がくることもなくなった。そして皆私を笑わせようと病院をめちゃめちゃにしたり楽しかった。








そして、私は足、次に腕が動かなくなり、声が出せなくなった。自分で食事も摂取できなくなり、点滴や経鼻栄養で賄い、人工呼吸器なしては呼吸ができなくなった。意識だけは薄れてはくれないようで、寝たきりで死ぬ事を待つのみとなった。今思えば、待つ事が多かった人生だった。晋助は、生きているだろうか。

会いたい、

最後に祭りで再会した際に彼に会うのはこれが最後だと決めていた。でもやはり脳裏によぎるのはあのバカな許嫁の顔。私よりも復讐を選んだクズ。なのに会いたかった。時はすでに遅く私はベッドの中でしか生きられない。悔しくて悔しくて、でもその気持ちをどうすることも出来ず目から涙が溢れる。




「何泣いてやがる」

懐かしい声だった。その声がする方へ首を向けたかったが私の身体はもう動かない。幻聴か、と思ったが私の頬を摩る暖かくて硬い手には覚えがあった。



「随分なもんだな」
最後に見た私の姿と今の姿は比べられないほど変わっただろう。痩せたし頭もボサボサだし風呂も入ってない。だから見せたくなかった。コイツなんでここ知ってるんだよ。てか何しに来たの。


「銀時から聞いた。全部」
顔は見えないが不貞腐れたように言ったのがわかった。


「…」

「…何か言えよ」
無理いうな。

「これ、返却しに来ただけだ。怒んなよ」
晋助は動かない私の左の薬指に銀時に返品するように言付けた指輪つけた。


「し、、ん…すけ」
強制的に酸素を入れられる合間に私は必死に彼の名前を呼んだ。彼は私が何を思い何を言おうとしたのかわかっていたようだ。



「くだんねぇ事ばっかり考えやがって、てめぇは」
そっと左手を握り締め、懐かしいその感覚を噛み締める。

「約束、したただろ。俺ぁ破る気も破らせる気もねぇ。」

「…う、ん…」

「昔から俺にはお前しかいねぇ、だからよ、だから」
晋助にずっと言われたかったことだ。ここ数年彼は復讐のみで生きてきた。待つ立場の私は、いい女でも見つけてしまい、私の事など忘れてしまうのではないか という恐怖を圧し殺していた。だがそんな弱味を見せることが、彼の道を遮ってしまうことになりそうで言うことができなかった。 数年溜め込んだものがその言葉ですっと消えていく感覚だった。


「なまえっ、だからな…」

「…わたし、…も…よ……ばか…ね」
さっきよりも声が出ていた気がする。なに泣いてるのよ、私だってまだ死ぬわけじゃないのよ。でもね、少し眠たいの。貴方が何かを私に訴えかけてるのだけど眠たくて聞こえない。もう少し寝かせて欲しい、貴方の横で。今ならいつもより眠れる気がする。あぁ、貴方の手を握り返したくても力入らない。でも貴方が強く握ってくれるから安心してるわ。
おやすみ、と目を閉じた瞬間に晋助の声と、外から何かが墜落するような大きな音がしたが、私はもう寝ることにした。最後にピーっ と聞きなれた心電図の目障りな音がした。











※あとがき

病名は筋萎縮性側索硬化症で今でも難病となってるそうです。
最後のピーは脈が止まった音で、墜落音は彼女を助けようとする何か(高杉が神威あたりに医者を脅して連れてくるように言っていた)と捉えてください。
彼女が助かるかどうかはお任せします。





作者的には一応は助かるかるも筋萎縮による後遺症で車椅子生活となるけど次は高杉が彼女を支えていくことを想定。

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