鶯の鳴き声
春の昼下がり、私は目を瞑り感覚を研ぎ澄ます。
特に聴覚を。
ホーホケキョ。
耳に響くその鶯の鳴き声に私はバッと目を開け、籠を手に取り全速力で走り出した。向かうは中庭をよく見渡せる縁側。
ー ー ー ー
「プリンセス、一足遅かったみたいだ…、鶯は飛んで行ってしまった…」
「はぁ…はぁ…また…?こんなに…全速力で来てるのに…」
私とは対照的で落ち着いた呼吸で中庭を眺めながらお茶を飲む鶯丸。ほとんど毎日の様にこうして縁側でのんびりしているのだ。
私は鶯丸の隣に腰掛けた。私の深く酸素を求める呼吸音と鶯丸の茶をすする音が混じり合う。そして一つ息を飲み、はぁ、と肩を下ろす。鶯丸がこちらを横目に見ている気がする。
「何で、逃げちゃうのかな…昨日も、一昨日もだよ?」
「…鶯も気まぐれな生き物だな…」
「鶯丸は、昨日も一昨日も見てるんだよね?」
「ああ、しっかりと見ているぞ、」
ゆったり、味わうように瞳を閉じ茶を飲む鶯丸をじーっと見つめる。すると鶯丸が私の方を向いた。突然交わった瞳に私は照れくさくなり視線を落とす。
「なぜ、そこまで鶯を捕まえたいのだ」
鶯丸の問いに私は、うーん、と少し慌てた様子で瞳を彼方此方に泳がす。
実は、そこまで鶯を捕まえたい訳ではないのだ。本当の目的は今、こうして縁側でゆったりお茶を飲む鶯丸と一緒に居たいだけ。
「えーっと、うん、えーっと…」
どうしよう、言葉が思いつかない。聞かれた時の為に考えとけば良かった…。
「とりあえず捕まえたいの!鶯が好きなの!うん!」
私は、無理やり言葉を絞り出した。まるで自分に言い聞かせるようにとても大きな声を張って。
目の前の鶯丸が、その声の大きさに驚いた様子で瞳をパチクリしている。
それに、鶯に対して勢いで好きと言ってしまい、私は恥ずかしくなり瞳をぎゅーっと瞑った。
「ならば、プリンセス。」
突然、耳元に間近で聞こえた鶯丸の声に肩をビクッと揺らし目を開ければ、鶯丸の肩が目の前にある。
「…え…」
どうやら本当に耳元で囁かれたみたい。私は自分の体が耳からどんどん熱くなってゆくのがわかった。
そして鶯丸は私の顔を覗く。少し口元に笑みを浮かべながら。
「代わりにこの鶯を捕まえるか?」
鶯丸の言葉に私の心で何かがポタッと落ちた気がした。言葉が見つからず唖然としていると、
ホーホケキョ。
鶯の鳴き声が聞こえた。しかし、それは目の前の鶯丸が口を尖らせて出したものだった。
「あ…ああ!」
この時わたしはようやく気づいた。
昨日、一昨日、聞いた鶯の鳴き声の正体はこの鶯丸だと。そして、ようやく気づいて目を丸くする私に鶯丸は悪戯っぽく笑った。
特に聴覚を。
ホーホケキョ。
耳に響くその鶯の鳴き声に私はバッと目を開け、籠を手に取り全速力で走り出した。向かうは中庭をよく見渡せる縁側。
ー ー ー ー
「プリンセス、一足遅かったみたいだ…、鶯は飛んで行ってしまった…」
「はぁ…はぁ…また…?こんなに…全速力で来てるのに…」
私とは対照的で落ち着いた呼吸で中庭を眺めながらお茶を飲む鶯丸。ほとんど毎日の様にこうして縁側でのんびりしているのだ。
私は鶯丸の隣に腰掛けた。私の深く酸素を求める呼吸音と鶯丸の茶をすする音が混じり合う。そして一つ息を飲み、はぁ、と肩を下ろす。鶯丸がこちらを横目に見ている気がする。
「何で、逃げちゃうのかな…昨日も、一昨日もだよ?」
「…鶯も気まぐれな生き物だな…」
「鶯丸は、昨日も一昨日も見てるんだよね?」
「ああ、しっかりと見ているぞ、」
ゆったり、味わうように瞳を閉じ茶を飲む鶯丸をじーっと見つめる。すると鶯丸が私の方を向いた。突然交わった瞳に私は照れくさくなり視線を落とす。
「なぜ、そこまで鶯を捕まえたいのだ」
鶯丸の問いに私は、うーん、と少し慌てた様子で瞳を彼方此方に泳がす。
実は、そこまで鶯を捕まえたい訳ではないのだ。本当の目的は今、こうして縁側でゆったりお茶を飲む鶯丸と一緒に居たいだけ。
「えーっと、うん、えーっと…」
どうしよう、言葉が思いつかない。聞かれた時の為に考えとけば良かった…。
「とりあえず捕まえたいの!鶯が好きなの!うん!」
私は、無理やり言葉を絞り出した。まるで自分に言い聞かせるようにとても大きな声を張って。
目の前の鶯丸が、その声の大きさに驚いた様子で瞳をパチクリしている。
それに、鶯に対して勢いで好きと言ってしまい、私は恥ずかしくなり瞳をぎゅーっと瞑った。
「ならば、プリンセス。」
突然、耳元に間近で聞こえた鶯丸の声に肩をビクッと揺らし目を開ければ、鶯丸の肩が目の前にある。
「…え…」
どうやら本当に耳元で囁かれたみたい。私は自分の体が耳からどんどん熱くなってゆくのがわかった。
そして鶯丸は私の顔を覗く。少し口元に笑みを浮かべながら。
「代わりにこの鶯を捕まえるか?」
鶯丸の言葉に私の心で何かがポタッと落ちた気がした。言葉が見つからず唖然としていると、
ホーホケキョ。
鶯の鳴き声が聞こえた。しかし、それは目の前の鶯丸が口を尖らせて出したものだった。
「あ…ああ!」
この時わたしはようやく気づいた。
昨日、一昨日、聞いた鶯の鳴き声の正体はこの鶯丸だと。そして、ようやく気づいて目を丸くする私に鶯丸は悪戯っぽく笑った。