見つめる先
真剣にボールを追いかけている。
そんな彼に気付くと視線は釘付けになっていた。
好きなミステリー小説を読んでる時や、好きな作者の新刊がでる日のうきうきしてるような表情を見るのも好きだった。
「よお、苗字。これもう読んだか?」
「あ!それ!この間発売した最新作だよね?でも今ちょっと厳しくて…」
「そっか。じゃあこれ貸すよ」
「え?いいの?」
「ああ。俺はもう読んだから。なかなか面白かったぜ」
「わあ!工藤くんのお墨付きって事だね!じゃあありがたくお借りします」
「おー。」
そんな彼と私はただのクラスメート。
ただちょっと、ミステリーものも好きな私と少し話をするくらい。
そう、
「新一!」
「ったく、うっせーな…」
私はただのクラスメート。
だって彼には、彼にはもう大切な人がいるから。
見てるだけ、それだけしか出来ない。
そんな恋…。