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目が覚めた時から違和感はあった。


諸事情から暫く暇を持て余している私は、しんとした室内が嫌で惰性でつけていたテレビから聞こえてくる『米花町』という言葉におや?とテレビに目を向けた。
私が知っているその町は現実にあるものではなく、とある漫画の世界の町だ。
日本のヨハネスブルクと揶揄されていたように、ニュース番組からは何度も米花町での殺人事件の話が放送されている。
なるほど、映画か特別企画のプロモーションの一つかなにかか。
はじめはそう思いながらテレビを眺めていたけれど、それにしては長い。
来る日も来る日も話題に上がる、米花町、鈴木財閥、毛利小五郎、怪盗キッド。
一日中テレビをつけっぱなしにしているからにはいつかネタばらしがくるだろうと予想していたにも関わらず、私の知る漫画やアニメの宣伝は一度も入らず。
まさかなー、なんて笑いながらスマホで検索してみると出てくるのはまるで実在するかのような米花町についての情報たち。

友人達や家族や自分の環境なんかがあまりにも変わっていなかったから気づくのに遅れたのだ、と所謂世界融合型異世界トリップというものを体験したにも関わらずのんびりと日常を過ごしていた私は言い訳をしたい。

さて、


「うーん……コナンか……コナンの世界なのか……」


私が幼い頃から放送されていた長寿アニメ・長寿漫画であるあの世界。
きっと一年が海産物家族方式で何度もループするであろう今日この頃、私が気にするのは今アニメのどれくらいのところなのだろうかということだ。



「もしかして、今喫茶店に行けば面白いものが見られるのでは…?」



私はしっかりと原作を追っていたわけではない。
ないけれど少しネットを開けば出てきた数多の情報のおかげで主要キャラの見た目や設定なんかは一応知っている。
異世界トリップ、特に命の危険を感じそうなコナンの世界において大体のセオリーであれば主要キャラには近づかないようにするものだろう。
しかしながら、主要キャラにお近づきにならなくても結構な確率で事件は起こる。
それならいっそ近くにいたほうが安全なのではないだろうか。

建前として真面目にそこまで思考しながら、まあ単純に見てみたいだけだという事実からはそっと目を逸らし私はスマホで米花町への行き方を調べた。



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