自己犠牲の塊だ。

汽車から降りて、ホグワーツに向かう。新入生を引率するのは私の養母、ミネルバだ。彼女は、周りの新入生よりも少し大きい私を見つけると、小さく笑みを浮かべて、すぐに顔を引き締め私たちを大広間の中へと引き入れた。

中はすごい豪華な天井に、豪華な料理のある机。そして歓声をあげて私たちを歓迎する先輩なのであろう人たち。隣のレギュラスくんは、少し居心地が悪そうに眉をひそめながら、歩いていた。

「...何をするんですか、リン」

まだ若い(私も十分に若いけれど)レギュラスくんに似合わないその眉に手を伸ばして、眉間のシワを伸ばす。嫌そうな顔をして見上げた彼にふっと笑って、私は前を向いた。

アルファベット順に呼ばれる名前。呼ばれた人は皆、前に進んで組み分け帽子をかぶった。グリフィンドールや、スリザリン。それぞれ組み分けされて、歓迎される人たちの元に歩いていく彼らの顔は、緊張からか少し頬が赤く見えた。

「レギュラスくんはどこに入ると思う?」
「おそらく、スリザリンです」
「スリザリンか...」

スリザリンは、闇の魔法使いが多く輩出されているところだ。本当は、私はグリフィンドールに入りたい。ミネルバのいる寮に、私も入れたらいいけれど、きっと無理に等しいだろう。

「多分、私もスリザリンだと思う」
「...リンが?」

禁じられた呪文を使った私はきっと、無条件にスリザリンだ。

「桜田・リン!!」

ミネルバの声が響く。私の名前だ。
隣にいるレギュラスくんに、じゃあねと手を小さく振って前へ歩いていく。用意された椅子に座った私にミネルバは小さく微笑むと、組み分け帽子を私の頭の上に乗せた。

「おや...これはこれは...」

組み分け帽子が話し出す。彼は、かぶった人の心の中や過去を覗いて一番合う寮に組み分けるのが仕事だ。禁じられた呪文を使った私の過去を見たのだろう。きっと、次に紡がれる言葉は「スリザリン」だ。

「君は、誰よりも心優しい...」

思っていた言葉じゃない言葉が聞こえた。私は思わず「え...?」と聞くと、組み分け帽子は静かな声で続けた。

「その優しさが、いつか自己犠牲によらない純粋な優しさになると願って...そして、君の新しい門出を祈って...


ハッフルパフ!!!!!!!」


そんな、思っても見ない言葉だった。

私は驚いたまま組み分け帽子を外し、ミネルバに渡す。目をパチパチと何度もしていれば、ミネルバは笑顔を浮かべながら私の頭をそっと撫でて、そして何度かポンポンと叩き、私の背中を優しく押した。

私のネクタイは黒色から黄色へと瞬時に変わる。同じように、黄色のネクタイをつけた人たちが拍手をしながら私を迎え入れてくれた。

よろしく、そう次々に言って私の手を握り握手をしていく。私を、受け入れてくれる人がいる。太陽のように暖かい黄色が、私を包み込んでくれていた。


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