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「渚くーーん!!銃捨てて出てこいよ!こいつで決めようぜ!」


カルマ君が大声でそう言う。渚君にゆっくりとちかづくカルマ君に、あぁ、彼も彼でしっかりと決着をつけたいんだなと思った。


「まさかのタイマンで決着かよ!近く行って見よーぜ!」


高台から飛び降りで、皆で二人の近くへ走り寄る。


「どっちが勝つとおもう?」
「圧倒的にカルマだろ。...と思うけど、渚の意外性なら殺ると思うぞ」


どう考えたってタイマンで勝つならカルマくんだ。だけど、殺せんせーを助けたいという気持ちを、カルマ君に一番わかってほしいのは、きっと渚君。


「わっ...わたしはカルマ君にも勝ってほしいです!」


隣を一緒に走っていた愛美が、立ち止まりそう叫ぶ。前を走っていた磯貝君と前原君が振り返った。


「個人的には負けて欲しくないんです。積み重ねてきた覚悟と努力を知っているから」


カルマ君は、天才だと思われている。そりゃ、天才だと思う。たくさんの知識やプレッシャーをずっと抱えているのに、自信に溢れた態度に実力。それを見れば彼は天才だと言われるのも頷ける。だけど、どうだろう。この1年間、彼と過ごしてわかったことがある。

人を茶化したり、口で負かしたり、傍目からみるやんちゃな彼は、人知れずいつも努力をしていた。カルマ君は、努力の天才なんだ、と。


「皆意見が一貫しなくなってるわねぇ。迷彩の効果が切れてくると、意見の色まで変わるのかしら」


狭間さんの言葉に、一理あるなと思った。

私自身、自分の計算でここまで劣勢と言われた戦況を覆せたことに達成感を抱いてる。全員が私を信じてくれたから出来た動かし方だったんだ。そして、なによりも、自分に自信があったから出来たことだった。

この頭で、皆を動かせたら。
この頭で、全力で殺れたら。

殺せんせーに勝てたと言ってもいいんじゃないのか。


「...狭間や茅野や三村や神崎みたいに、予想外の強さを見せた奴等がいた。一方で期待通りに暴れまわった奴らがいたり、次こそはと燃えてる奴等がいたり。ちゃらんぽらんに見えてクソ真面目なやつがいたり。ただのチビだとおもってたやつが、殺しの天才だったり。天才だとおもってたやつが、実はかくれて努力してたり。...どっちが勝っても文句はねーよ。こんだけ色々人材がいりゃ、どんな難題もクリアできるかもしれねぇ...」


寺坂君の言葉に、全員が黙る。
色んな人間がいるんだ。それがどれ程に素晴らしいことなのか。私達はちゃんと、わかっていた。

カルマ君、渚君が対面している場所に近づいた。二人を囲んで、私達はそれを見届ける。どっちが勝っても文句はない。皆がそれを胸に秘めていた。


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