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修学旅行当日。
ビッチ先生が派手な格好で登場したり、殺せんせーが乗り遅れたり、菅谷くんの手先の器用さが現れたり。
修学旅行という特別な時は、みんなの新たな一面が見れていいね。
愛美とそう話しながら、茅野っちや渚くんと花札をして遊ぶ。
まず、トランプじゃないのはなんで?
「ね、みんなの飲み物買ってくるけど、何のみたい?」
神崎さんが席を立ち上がってそう聞く。
飲み物買うなら私も買いたいなーと思って、私も行くよと言えば愛美も茅野っちも一緒に行くことに。
「楽しみだね、京都!!」
「うん!!」
「八橋早く食べたい〜」
「サチちゃんは昨日もそれ言ってましたね」
「え、サチって食べ物すきなの?」
「大好きだよ?」
「なんか意外。数学以外好きじゃないんだと思ってた、ね、神崎さん」
「ふふ、確かに」
「数学も好きだけどちゃんと食べますー」
数学以外好きなものがないとはあながち間違いではないにしても、その言葉に少しむっとしながら笑って話す。こうやって友達と何気なく話す時間も、修学旅行では特別な時間だよね。
なんとか旅館について、1日目の工程を迎える。私たちは、話し合った通りコースを歩くことに。
「見つかった?神崎さん」
だけど、個別にまとめておいたらしい神崎さんの日程表が見つからないようだ。
カバンに入れておいたはずなのに、と何度も探す神崎さん。
「多分新幹線で落としたんだろうね...まだ見つからない?」
「うん...いつ落としたんだろう...」
実際にコースを動くことになった。
渚くんの作ったコースには、坂本龍馬暗殺の場所や、織田信長暗殺の場所など。ことごとく暗殺に関連のある場所だった。
「暗殺の聖地って感じだね」
「なるほどな〜」
次に動いた場所は、神崎さんの希望のコースだった。
京都は一見さんお断りの店が多いから、外見にこだわらない。その性質を利用して、人一人いない寂しげな通り。
「確かにここなら暗殺に向いてるね」
「だな」
みんなで話しながら歩いていると、後ろからガラの悪い高校生がきた。
「...何、お兄さんら?観光が目的っぽくないんだけど」
「男に用はねー女おいてお家に帰んな」
そんなセリフを吐いた男に向かってカルマくんは思いっきりアッパーを決める。
私はすぐさま愛美の手をつないで電柱の影に隠れて、事を見る。
できれば神崎さんと茅野っちも呼びたいんだけど、二人が私の視線に中々気づいてくれない。
とりあえず冷静に現状を把握していると、カルマくんが後ろから来た新たな男の人に鉄パイプのようなもので頭を殴られた。
「ちょ、なに!!」
茅野っちが男の人に連れて行かれる。
愛美が震えながら下を向いている。私は愛美の肩に手をおいて、音の出ないカメラアプリを起動させて、男たちの顔を撮った。
そうこうしてるうちに神崎さんもつれていかれて...。
男達が消えたあと、殴られて地面にうずくまる杉野くんと渚くんの元に愛美と駆け寄る。
「み、みんな!!大丈夫ですか!?」
「よかった、奥田さんと新稲さんは無事で」
「ごめん、茅野っちたちも影に隠させればよかった」
「...車のナンバー隠してたよね?」
殴られた頭を手でさすりながら立ち上がるカルマくんが私に聞く。
それに頷いて、多分犯罪なれしてるね、と答える。
「でも、写真撮った」
そう言って、みんなに携帯で撮影した画像をいくつか見せる。それを覗き込んだ杉野くんが「ナイス、新稲!!」と、指をパチンとならした。
全員でこのあとどうするかとしあんしているとき、ちょうど渚くんの後ろに見えるしおりが風でめくられて見えた文字に、クラスメイトが拉致られた時、と書かれてるものがあった。
「ちょ、待って!!」
「え?」
「今、しおりに拉致られた時の対処法とかって書いてた!!」
慌ててそのしおりの元に駆け寄ってしゃがみこんでそのしおりに手を触れる。
「...このしおり何なんだ?」
「殺せんせー半端ない...」
私がその辞書のようなしおりをめくっていく間に、カルマくんが復活して、私の携帯を返してきた。
「顔は覚えた、俺が直接処刑する」
「...切れてますね〜」
「そりゃあね」
「とりあえず杉野くん、殺せんせーに連絡してもらえる?」
「おう」
杉野くんと愛美に先生への連絡を任せて、私はカルマくんと渚くんの前にしおりにとある事項が書かれているページを出す。
「いや、細かいこと書きすぎだろ、このしおり」
「すごいよ。鴨川でカップルを見たときの立ち直り方も書いてる」
「余計なお世話だね...」
「連絡できたぞ!!」
殺せんせーの粋な計らいなのかなんなのか、いろんな事が書かれてるそのしおりに苦笑を浮かべている時、杉野くんと愛美が携帯を切って、そう叫んだ。
私はカルマくんの目に自分の目を合わせて、そして次に渚くんの目を見る。二人とも、さっきよりは冷静な顔をしていた。
「よし、助けに行こっか」
「うん...!!」
分厚い辞書のようなものを片手に、私たちは二人を助けるために歩く。
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