01

「おーい新稲ー」
「んー?」

昼休み、いつものように愛美と化学の問題を解いている時、岡島に話しかけられた。

「今先生のハンディキャップ暗殺大会することになったんだよ、手伝ってくんね?」
「...どゆこと」

話をまとめると、こういうことらしい。

クラスの花壇に植えていたチューリップを殺せんせーが抜いてしまい、そのお詫びとして縄でぐるぐる巻きにして木から吊るし、反撃できないようにするそうだ。

「そんで、棒にナイフくくりつけて突き刺すためにさ、棒と縄持ってこようと思って!!」
「わかったーいいよー」

愛美と開いていた化学の教科書にペンを置き、愛美に行ってくるねと笑顔で言う。彼女は私を見上げてにこりと笑った。

「気をつけて、サチちゃん」
「うん」

机に手をついて席を立ち、岡島の後をついていく。今日もやけに天気が良い。

「あ、茅野っちも手伝ってー」
「うん!!」

靴に履き替えて外に出ると、ちょうど茅野っちがそばにいた。彼女にも声をかけて三人で倉庫に行く。
三人で縄と棒を分担し、みんなが待っている場所に行こうと向かうと途中で烏間さんにあった。

「あ、烏間さん、こんにちは!!」
「こんにちは、烏間さん」
「こんにちは。明日から俺も教師として君らを手伝う。よろしく頼む」
「そーなんだ!!」
「じゃあ烏間先生ですねー」
「...ところで奴はどこだ?」

茅野っちが烏間さんに説明をしている間、私は岡島から棒を受け取り、せっせとナイフを縄でくくりつける作業に専念した。

「オーーーイ!!棒とヒモ持ってきたぞー!!」

出来上がった何本かを手にして、そばにいた前原くんやメグに渡して改めて上を見上げる。

「ヌルフフフフ無駄ですねえE組の諸君」

シマシマ模様の顔の殺せんせー。明らかに舐められている時の顔だ。
あはは、と私は乾いた笑みを漏らしていると、調子に乗ったのか枝を折って地面に追突した先生。

一瞬静まる空気に、先陣を切ったのは誰か。

「今だ!!ヤレーーーー!!」

全員でナイフを突き刺していけば、焦ったのか縄が体に絡まった先生に、ここぞとばかりに皆せっせとナイフを振りかざしていった。

「ニュヤー!!」

全員から攻撃されて慌てたのか、先生は縄を抜け出し屋上へと飛び出した。

「ここまでは来れないでしょう!!基本性能が違うんですよバーカバーカ!!」

そして屋上で私たちに向かってそう叫ぶ先生。なんて大人げない...。
苦笑を漏らしながらそう思っていると、先生ははぁはぁと荒い呼吸を整えた後、一言こう言った。

「明日出す宿題を二倍にします」
「チイセェ!!」

全員の声がかぶった。器が小さすぎるじゃないか!



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