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次の時間は歴史の小テスト。

小テストの時間ぐらい静かにして欲しいのだけれど、先生はさっきのカルマくんの煽りにイライラが止まらないのか、何度も壁にその触手をパンチしている。

触手が柔らかいからぷよんぷよんとなっていて、ある意味うるさい。


「ヨォカルマぁ、あのバケモン怒らせてどーなっても知らねーぞー」
「またお家にこもってた方がいいんじゃなーい」


寺坂くん、村松くんの二人がカルマくんをおちょくる。


「殺されかけたら怒るのは当たり前じゃん。寺坂、しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」
「な、ちびってねーよ!!」


カルマくんの言葉に少し顔を赤らめながら切れる寺坂くんに、流石にうんざりした私はうるさいと口パクで言って寺坂くんを睨みつけた。


「こらそこ!!テスト中に大きな音たてない!!」


同時に先生も怒ってくれたので、寺坂くんは慌てながら乗り出していた身を椅子に戻し、私の方を見て、うるせーと小さい声で言った。

うるさいのはそっちじゃないか。


「ごめんごめん殺せんせー、俺もう終わったからさ、ジェラート食って静かにしてるわ」
「ダメですよ授業中にそんなもの。まったくどこでかってきて...」


ちらりと横を見れば、隣の席のカルマくんがアイスクリームを手にしていた。本当にそれどこから出した。
しかもそのアイスは先生のだったみたいで、怒りながら先生が私のいる席の方にやってくる。

はっきり言ってクソうるさい。迷惑すぎる。

少しイライラしながらテストを解き、途中で立ち上がっていなくなった隣の席を見つめる。カルマくんがやってきたことにより、私の生活は大変なことになりそうだった。




「もう、どうしよう。このまま続くようだったら私は席替えを所望する」
「確かに...このままだと授業に集中できませんね...」


次の日の朝、愛美と二人してはぁ、とため息をつきながら教室に入った。カルマ君の席に近い私たちは2人してうんざりとしていた。昨日の今日でもう結構精神やられているんだけど。

扉を開いて一番最初に目に入ったのは、包丁でぶっ刺されたタコ。


「....」


二人で黙りながらそれを見つめると、席に座っていた莉桜が話しかけてきた。


「おはよ、サチ、奥田ちゃん」
「おはよ、莉桜。これ...」
「あぁー...ね」


莉桜もさすがにこれにはお手上げなのか、いつもの彼女らしからぬ苦笑を見せながら後ろに座っているカルマくんを見る。

やっぱり、1日で大人しくなるわけないか...。





「おはようございます」


朝のチャイムがなり、先生が教室に入ってくる。
みんな下を向いたり、気まずそうに視線を逸らしたりしている。


「どうしましたか皆さん?」


不思議そうに尋ねる先生の目にも、あれは入ったのであろう。
タコを見ながら先生が黙っていると、


「あ、ゴッメーん!!」


とわざとらしくいうカルマくん。もうその声にため息をつきたくなる自分をなんとか押し込めて、先生とカルマくん両方を見る。


「捨てとくから持ってきてよー」


と言ったカルマくんに、わかりましたと言った先生は、触手をドリル状にして、どこから持ってきたのかミサイルと何かでマッハに触手を動かして、そしてカルマくんの口に熱々のたこ焼きをぶち込んだ。


「あっつ!!」
「マッハでたこ焼きを作りました。これを食べれば健康優良児に近づけますね」


一つ一つキュルキュルとドリルを回しながらたこ焼きを詰めていく先生。


「先生はね、カルマくん。手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を。今日一日本気で殺しに来るがいい。その度に先生は君を手入れする」



そんな今日1日本気で殺しなんてしたら、隣の席の私の集中力がもたないんですが。



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