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「数学の申し子、標的はそっちにいった」
「了解、女たらしクソ野郎」


今朝、いきなり始まった『今日1日コードネーム縛り』。
全員各自のコードネームを考えて殺せんせーが引いたものをその人のコードネームにして、1日その名前を呼んで過ごす、というものだ。

なんでも、木村くんの本名、正義という名前はまさよし、ではなくてジャスティス、と呼ぶんだそうで。
それを聞いた時思わず笑顔が固まった。

まぁそれを聞いた矢田っちの、コードネームで呼び合うのかっこいいというセリフから、こういうことになってしまったのだけれど...



数学の申し子って何。超中二病みたいで嫌なんだけど。


はぁ、とため息をこらえて携帯の向こうにいる前原くんもとい女たらしクソ野郎に私は了解と発する。
すぐに、ホームベース(吉田くん)、ヘチマ(村松くん)コロコロ上がり(イトナくん)に女たらしクソ野郎(前原くん)が指示をするふりをする。


「鷹岡もどき、今!!」
「おう!!」


三人が標的である烏間先生に狙われている間に、後ろから鷹岡もどき(寺坂くん)が標的に撃つように指示を出す。


「だが足りない!!俺に対して命中一発じゃ到底奴には当たらんぞ!!毒メガネ、永遠の0、射点が見えては当然のように避けられるぞ!!」
「く、気づかれた!!そっちでお願い凛として説教!!」
「OK!!数学の申し子、指示をお願い!!」


永遠の0(茅野っち)と凛として説教(メグ)の声が聞こえる。
私は目を閉じて携帯に向かって声を発する。


「ギャル英語と性別と一緒に動きながら撃って!!」
「「「了解!!」」」
「変態終末期、この漫画がすごい!!は距離を保ちながら標的を狙う!!中二半は標的の退路を塞ぐだけでいいよ!!」
「オーケー」


あとはギャルゲーの主人公(千葉くん)が撃てば作戦通りだ。
ギャルゲーの主人公(千葉くん)が標的に向かって銃を撃つと、案の定烏間先生はそれを木の板で受け止める。


「ギャルゲーの主人公!!君の狙撃は常に警戒されてると思え!!数学の申し子、君の指揮もだ!!」


と、標的がそう思うのも計画通り。
そうやって隙があるときに狙うのが、最後の彼の役目だ。


「ジャスティス!!」



ジャスティスの発砲音が裏山に鳴り響いた。







「で、どうでした?一時間目をコードネームで過ごした気分は」
「なんか...どっと傷ついた」


改めて恥ずかしい。数学の申し子なんてそんな大層な名前。はぁとため息をつきながら殺せんせーの話を聞く。
さっきの木村くんの決め方は格好良かった。あぁ言ったときにジャスティスと呼ばれるのは本当に名前の通りのものだ。


「名前は人を作らない。人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけです」


殺せんせーのその言葉に、木村くんも少しは気が楽になっただろうか。
ジャスティスなんて、いい名前だと自分でも思えるようになれればいいけれど。


「さて今日はコードネームで呼ぶ日でしたね。先生のコードネームも紹介するので、以後この名で呼んでください。永遠なる疾風の運命の皇子、と」


そうドヤ顔で言った殺せんせーに全員からのブーイングと暴動が起きた。
私は呆れながら、バカなエロのタコでしょと一言呟くと、隣にいたカルマくんが笑いながら「新稲ちゃんがバカなるエロのチキンのタコだってさー」と大きい声で言った。


「新稲さんひどい!!」
「チキンは言ってない!!」
「それでもひどい!!」


というわけで、1日殺せんせーを全員でバカなるエロのチキンのタコと呼び続けた。





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