わたしの話03

次の日、バイトから帰った私を待っていたのは、昨日と同じケータからのタックルだった。


「姉ちゃん!姉ちゃん姉ちゃん!」
「なあに、ケータ」


今日も今日とて、ぐりぐりと背中に額を押し付ける。
さすがに今のは痛いよ…。
しかし姉離れができない弟がいるように、弟離れができない姉も、実はここにいたりする。「部屋きて!俺の部屋!」と言われて、お腹がすいているのにも関わらずそれに従った。台所から夕飯の香りが漂ってくる。遠退く私の夕飯。うらめし、景太。あまりワガママいってるとそのうち姉ちゃんも妖怪になっちゃうからね。


「大丈夫!姉ちゃんが妖怪になったら俺が友達になったげる!」
「ああ…そう」


我が弟ながら、どこかずれている。
ぐいぐい引っ張られながら部屋に入ると、ウィスパーが「おかえりなさーい」と出迎えてくれた。


「ただいま、ウィスパー」
「姉ちゃん!俺、今日妖怪と友達になったんだ!」
「え、そうなの?」


昨日の今日だというのに、景太の寛大な心には脱帽だ。私が妖怪を認めるのに何年もかかったと思っているのだろう。これが若さなんだろうか。…私だってまだ高校生なんだけど。


「ケータくん、早速ご紹介したらどうですか?」
「うん、そうだね!」


俺の友達、出てこい!ジバニャン!と掛け声をかけて、景太は妖怪ウォッチに何かを差し込んだ。途端、辺りに光が指して私は思わず腕で顔をかばう。せめてひとことクッションおいてよ…相変わらず私にはお構いなしの弟である。そして光がおさまった頃、そこにいたのは。


「ジバニャン!」
「これが新しい俺の友達だよ!」


ゆらゆら2本の尻尾を揺らす、猫の妖怪だった。